腹痛:まずは全身状態とバイタル確認して緊急性を確認
重大疾患問診:突然の激しい疼痛、持続痛(6時間以上)、体動・咳嗽で増悪、発熱、強い便意(骨盤腔内の腹膜刺激症状:腹部動脈瘤破裂がありうる)、長引く嘔吐、前失神/失神、吐下血、心血管リスク/不整脈
・問診
Onset:突然発症→詰まる(梗塞、結石)、破れる(破裂)、裂ける(解離)、捻じれる(捻転)など危険→血管系、卵巣頚捻転、尿管結石など→まず腹部エコー、で造影CTとか?
Position:心窩部痛、右上下腹部通、(若年女性の)下腹部痛に特に注意。左も腎梗塞やS状結腸捻転、虚血性腸炎など色々あるけど、他の所見から見た方が良いか
Quality:体性痛(局在の明確な鋭い痛み→壁側副膜・腸管膜由来)、内臓痛(局在の不明確な鈍い痛み→管腔臓器の虚血・炎症・攣縮・拡張)
Quality:強いだけでは重篤とは言えない。重篤な痛み+α(突然発症、持続痛など)で重篤な疾患かも。痛みが強いのに腹膜刺激徴候なし→腹部大動脈瘤破裂、急性腸管膜動脈虚血症、卵巣茎捻転、卵巣出血など疑う。
Reffered pain:今回は関連痛。下壁梗塞→心窩部痛、肺塞栓、胸膜炎→上腹部痛、胆石発作→右肩部痛、虫垂炎→心窩部痛。参考程度に
Situation:
増悪因子)食後に増悪→胃潰瘍、胆石発作、膵炎。空腹時・夜間に増悪→十二指腸潰瘍
寛解因子)前屈で軽快→急性膵炎、排便で軽快→便秘症
Time coarse:間欠痛(痛みの時間的な強弱がある)→腸管、尿管由来の可能性が高くなる。虫垂炎、膵炎でもなるので参考程度に。持続痛は何か変なやつかも。
Association:関連痛>機能的疾患では発熱は通常認めない→発熱があったら何かある。血便→下部消化管疾患を示唆。他の腹痛、嘔吐、下痢は非特異的。分からない。頻回・水様性下痢→これなら腸炎を示唆。

疼痛管理
胆石:ブスコパン(平滑筋弛緩、胆嚢収縮抑制)
体性痛:ロキソニン60、トラマール(オピオイド)、ソセゴン(ペンタゾシン)、アセリオ(1000)
ガス痛:ガスコン 

・40%は非特異的で診断がつかない
・特定したい→虫垂炎、胆石、胆嚢炎、イレウス、尿管結石
・除外したい→AMI、腹部大動脈瘤破裂、上腸間膜動脈閉塞症、膵炎、消化管穿孔、子宮外妊娠

部位からの診断:診断的治療・痛みを取ることが大事
☆上腹部痛:食道、胃十二指腸、肝胆膵
最多は非特異的疼痛、胃痙攣、過敏性腸症候群とかもある
・上腹部の締め付けられる痛み→鎮痙剤<ブスコパン10mg頓服:抗コリンで消化管運動抑制>
→診断的治療
・食道逆流症、急性胃炎、消化性潰瘍→オメプラゾール、ラベプラゾール、エソメプラゾール(ネキシウム)。軽度なら胃粘膜保護のレバミピド(ムコスタ)、ファモチジン(ガスター)

・特発性食道破裂→心窩部痛、中年男性、飲食後嘔吐→縦隔気腫、皮下気腫→胸部CT(食道周囲の気腫と炎症像)→コンサル、ope、縦隔ドレナージ

・上部消化管穿孔→突然発症の上腹部激痛で腹部板状硬。胸部xpでのfree airは参考程度
→コンサル、入院、絶食、補液、抗菌薬(セフメタゾン、ダラシン要勉強、腸内細菌、嫌気性菌ターゲット。感染性腹膜炎予防に)ope

・憩室炎:腸内細菌、嫌気性菌、連鎖球菌、腸球菌など混合感染
抗菌薬:レボフロキサシン+メトロニダゾール

☆胆石・急性胆嚢炎:高齢者で増加する。90%以上結石あり。3所見で確診
胆嚢が腫れて(画像)+炎症起こして(血液検査)+お腹痛い(Murphy徴候、右上腹部痛)
4F(forty40代、fatty肥満、fertile多産、female女性)→昭和のおばちゃん
右上腹部~心窩部痛、持続痛が多い、脂っこいものを食べた後に痛み、嘔気・嘔吐を伴う。食後4時間程度経過したら、胆嚢の収縮も収まり、疼痛軽快する。
→所見は右上腹部圧痛、Murphy sign、肝叩打痛→怪しければエコー(プローブによる圧迫での疼痛誘発:sonographic Murphy徴候は便利)、背部への放散痛も有用
エコー所見:胆嚢腫大(>8x4cm)、胆嚢壁肥厚(≧4mm)、胆泥・胆石
血液検査も一応やる。でも、肝胆道系酵素の上昇はあまりない。ちょっとあるくらい
上昇してたら→急性胆管炎、総胆管結石、重症型胆嚢炎、ミリッチ症候群を疑う。
※急性胆嚢炎+γ-GTP上昇→総胆管結石疑う。他にはT-Bil上昇が胆管炎ぽい
で、穿孔・膿瘍形成など重篤になりそうなら、CTとるのもよい。
CT所見:壁肥厚、胆嚢周囲のけば立ち、胆嚢腫大、胆嚢周囲液体貯留
高齢者は所見は微妙なことも多いので、病歴とかを慎重に
☆治療:絶食、輸液、鎮痛薬(ブスコパン+NSAIDs)、抗菌薬(ユナシン勉強)
合併症注意:膿瘍、壊疽性、穿孔、気腫性、胆嚢捻転症→全部緊急手術適応。画像CT
高齢者なら総胆管結石→化膿性胆管炎の合併も多い。
総胆管結石GradeⅢ以上(臓器障害あり)なら内科緊急コンサル

☆急性閉塞性化膿性胆管炎
Charcot3徴(発熱、黄疸、右上腹部痛)+Reynolds5徴(意識障害+ショック)
重要だけど、徴候がそろうのは晩期。どっちかというと黄疸や肝機能障害がみられやすい。
エコーでの7-11ルール:総胆管径は通常7mm未満、明らかな拡張は11mm以上から
あと、エコーでの描出率は40%くらいで低いので、CT、MRCPの追加も大事
さらに、高齢者、Bil≧10mg/dlなら、胆道癌の否定が大事になる。CA19-9, CA125
治療:絶食、輸液、鎮痛(ブスコパン、ソセゴン)、抗菌薬(ユナシン)、内科コンサル

結局、胆嚢炎疑ったら、胆管炎の検索は必要、初期治療も一緒で培養・抗菌薬。

※閉経後ホルモン補充療法で無石性胆嚢炎になることもある。
※ミリッチ症候群:胆嚢頸部に結石が嵌頓し、その結石の圧迫や炎症の波及により総胆管に狭窄・閉塞をきたす状態

☆急性膵炎<アルコールと胆石が原因で最多、他に高脂血症、自己免疫、副甲状腺機能亢進症(高Ca血症)、薬剤性、感染、医原性(ERCP)>死ぬ疾患
上腹部痛+膵酵素(リパーゼ>アミラーゼ)上昇、膵炎画像(膵石、膵管の不整拡張や狭窄、膵実質の減少と線維化いずれか)
※尿中アミラーゼは正直微妙。アミラーゼ2,3日で消失→長期間高値なら膵仮性嚢胞等疑う
皮下出血斑(cullen徴候とか)は無視してオッケー
腹部エコーや胸腹部xpもあんまり役に立たない
☆実際
酒の多飲とか肥満+割と持続する上の方の腹痛、背部痛+胸膝位で軽快
→疑って、リパーゼ、アミラーゼ、肝胆系酵素<結果が出るまでにダメ元でエコー?>
→上昇してたら造影CT, 重症度判定もやる。
→治療、モニタリング、診断ついたら重症度関係なく入院
→絶食、輸液、鎮痛剤(ソセゴン15mg iv)、内科緊急コンサルト(重症なら転送も考慮)
※劇症化する可能性は実際あるので、最初症状がショボくても入院必要だったりするかも

・重症度判定基準(9つの予後規定因子の全身状態+造影CTの膵炎所見)繰り返しやる
ショック(sBP<80mmHg)、PaO2≦60(or呼吸不全状態)、BUN≧40mg/dl、LDH≧基準上限の2倍、血小板数≦10万、Ca≦7.5mg/dl、CRP≧15mg/dl、SIRS≧3項目以上、70歳以上
※体温、脈拍、呼吸、白血球
☆スコアが3点以上だと、1/5以上が死ぬ

造影CT(参考程度に)2つの合計点数=GRADE数
膵外進展度:前腎傍腔0点、結腸間膜根部1点、腎下極以遠2点
膵の造影不良域(膵頭部、膵体部、膵尾部):1区域0点、2区域1点、2区域max2点(3区域)

☆治療
初期輸液(外液):乳酸リンゲル液(ラクテック、ソルラクト) 心腎機能次第で変わる
脱水なら500ml/hくらいで急速、そうでないなら140ml/hくらい(1日6本入れる?)
生食だと大量投与でアシドーシス起こすため、やめとく
→血圧、尿量が確保されたら維持量に変える
他の治療(FOYとか)はエビデンス微妙
※胆石性膵炎なら早期にERCPで胆石除去、膵活性嚢胞とかならドレナージとかも
※初期は化学的な炎症で無菌的。2次性(2割)に感染起こして膵膿瘍きたす→抗菌薬もやるけど、ドレナージが大事

虫垂炎:1/3は見落とされる→経時的な変化が大事→翌日のフォロー
・心窩部痛・臍周囲→食欲不振・嘔吐→圧痛(右下腹部)→発熱→白血球増加の順で起こる。
・嘔吐→痛みなら別の疾患っぽい。
有用な所見
筋硬直、Psoas sign、発熱、反跳痛、叩打痛、筋性防御など
Alvardo(MANTRELS)スコア:入院が必要か否かのため。除外には使えない。
Migration of  pain 移動痛、Anorexia 食欲不振、Nausea 嘔気、嘔吐、Tendernes in RLQ 右下腹部痛(2点)、Rebound 反跳痛、Elevated temperature 37℃以上、Leukocytosis WBC>10000/μl(2点)、Shift of WBC count 白血球左方移動
1~4点:帰宅可、5~6点:経過観察/入院、7~10点:手術
・徴候
obturator sign:右股関節内転時に疼痛出現→骨盤内腔の炎症所見(股関節屈曲させて足を外に)
Rovsing sign:左下腹部を下から上に押さえて右下腹部が痛くなる→右腹膜刺激徴候
psoas sign:右大腿の進展で右下腹部痛出現→腸腰筋の上の炎症、感度16%, 特異度95%
Rosenstein sign:左側臥位で右下腹部圧痛増強→小腸だけずり落ちて虫垂触知しやすくなる
Durphy's sign:せき込んで右下腹部痛出現
heel drop test:つま先立ちから、踵を落として響くかどうか
tappingもやっとく
経過や疼痛部位で怪しそう→腹部エコーやヘリカルCTで確認→外科コンサルト
虫垂炎疑わしいけど、画像上陰性→24時間の経過観察が必要。
抗菌薬:セフメタゾール(+10ml液溶解)
(参考)緊急手術:汎発性腹膜炎、高度イレウスがあるときくらい?
膿瘍あったらドレナージ。いずれにしても外科コンサルト


・腸閉塞あたりの概念の変更(絞扼性イレウス→絞扼性腸閉塞になった)
イレウス→腸管麻痺によって腸管蠕動が低下した状態。(機械的閉塞はなし)
汎発性腹膜炎などの腹腔内の炎症、腸管への血流低下→腸管の蠕動低下

腸管閉塞→腸管内腔が閉塞した状態
腹部手術→癒着→腹痛、嘔気→便秘
70%くらいは小腸閉塞(術後癒着)、15%はヘルニアで
特徴:腹部手術歴あり、腹部膨隆・蠕動音異常・腹部全体の痛み、食事で増悪、嘔吐で軽快、明らかな間欠痛あり、排便なし(80%)、放屁なし(90%!)、排ガスを伴わない下痢
→腹部xp<異常所見3x3ルール:小腸径3cm以上、ニボー3個以上、小腸壁3mm以上>
+腹部エコーも
→造影CTで閉塞機転と血行障害の有無の確認を
→絶食、経鼻胃管/イレウス管、輸液、外科コンサルト
※絞扼性を示唆する危ない所見:高体温、頻拍、腹膜刺激症状、ペンタゾシン無効、WBC10000台、代謝性アシドーシス、

※腸管閉塞の原因にヘルニアを鑑別に入れること。腹壁・鼠径・大腿部
・立位で咳で腹圧かける。男は鼠径、女は鼠径以外。
CTでの読影:いろいろ(closed loop, 血行障害とか)

AMI、腹部大動脈瘤破裂、上腸間膜動脈閉塞症、子宮外妊娠

若年女性の腹痛:特有→妊娠、PID、ありがち→便秘、尿路感染(腎盂腎炎、膀胱炎)
・内診や直腸診はしない。やってもわからない。
右上腹部痛→Fitz-Hugh-Curtis症候群(骨盤内炎症症候群+肝周囲炎)
クラミジアが原因として最多→血清クラミジア抗体IgA, IgM、子宮頚管分泌物(PCR検査)

下腹部痛
PID:不妊の原因(やばい)、見逃さない。でも腹膜炎とかの症状はわかりにくい→非典型例では「治療機会を逃す」よりも「治療しすぎ」の方を選ぶ
症状:骨盤領域の疼痛、膣分泌物異常、発熱、性交疼痛、排尿時痛、月経、悪心・嘔吐
起因菌:淋菌、クラミジア・トラコマティスが契機になって、嫌気性菌、グラム陰性桿菌が起因菌になるぽい<B型肝炎HIV、梅毒の検査もやる>
治療<婦人科コンサルト>
外来:ロセフィンorジスロマック+メトロニダゾール(淋菌、クラミジア)。(ニューキノロン単体は耐性淋菌のため×)
入院:セフメタorユナシン+ドキシサイクリン