頸部・背部・腰部痛
まずはred flag確認してやばい疾患を除去。血管、細菌、脊髄圧迫。3つに共通
☆高齢発症、高熱→感染、安静時痛→急性腰痛症でない別の疾患、重度の外傷の先行→椎骨骨折、悪性腫瘍の既往→骨転移、薬剤・アルコールの乱用→膵炎、体重減少→腫瘍、感染症、筋脱力→神経圧迫、膀胱直腸障害→すぐ対応

流れとしては、外傷、神経、炎症、腫瘍、の順で残りの骨、筋肉を鑑別
外傷→あり→椎骨骨折の確認
↓なし
上下肢への放散痛→あり→神経根症状→あり→MRIで圧迫性病変検索
↓なし              →なし→神経叢の障害<悪性腫瘍、末梢神経障害
朝のこわばり
運動で改善→あり→炎症性関節炎(RA、脊椎関節炎、リウマチ性多発筋痛症)
炎症反応高値
↓なし
棘突起の圧痛→あり→骨由来→体重減少、安静時痛、担癌→あり→腫瘍
↓なし                       →なし→脆弱骨折
筋肉・靭帯由来、
脊椎症、
繊維筋痛症


・頸部→だいたい筋肉・靭帯由来の痛み、だいたい安静で軽快。他のやばいやつを除外
くしゃみやいきみで増悪→頸椎椎間板ヘルニア
鑑別:
・リウマチ性多発筋痛症(PMR):50歳以上、両肩、朝のこわばり、全身倦怠感、体重減少
・脊椎関節炎(強直性脊椎炎SpA):若年(50歳以下)
・結晶誘発性関節炎(crowned-dens syndrome):高齢者、微熱、間欠的な頸部痛発作
繊維筋痛症:全身倦怠感、不眠、抑うつ、頭痛、過敏性大腸症候群など

放散痛:筋節に一致した分布をとる
しびれ:デルマトームに沿った分布。神経根障害あっても画像で神経圧迫は認めないこともある
圧痕性病変:脊椎症、椎間板ヘルニア、悪性腫瘍、膿瘍、脊柱管狭窄症
非圧迫性病変:悪性リンパ腫帯状疱疹ウイルス、HIV、サルコイドーシス、血管炎

基本は所見で障害部位のレベルの当たりをつけて、画像でそれの確認(X線では斜位を加えることで、椎間孔狭小化の有無が確認できる)
治療:メカニカルな病態ならNSAIDsとかの保存療法→整形外科領域の治療とか


・腰背部痛:基本の進め方は頸部と同じだけど、これに腹腔内臓器病変が加わる。
実際は98%が整形外科的で、70%以上が特発性、他は辷りや狭窄症、ヘルニアなど
残りの2%の中にヤバいヤツがてんこ盛り。それらをまず問診で除外してから整形に
除外したいのはVINDICATEのVIN
Vascular(血管系):動脈の解離、破裂、腎脾の梗塞・出血、脊髄硬膜の血腫、副腎出血も
Infection(感染):腎盂腎炎、腎膿瘍、(化膿性)脊椎炎・椎間関節炎・仙腸関節炎、腸腰筋膿瘍、硬膜下膿瘍、帯状疱疹、骨盤内炎症症候群(PID)
Inflammation(炎症):膵炎、十二指腸潰瘍
Neoplasm(腫瘍):脊髄腫瘍、脊椎腫瘍(転移性)、多発性骨髄腫、膵・腎・直腸癌

これらを示唆する問診事項
<20歳未満→強直性脊椎炎、感染>、<6週以上持続、安静臥床で改善しない、鎮痛薬で改善なし→急性腰痛症以外>、<誘因なく突然発症→尿管結石、大動脈解離・破裂、腎梗塞など>、<発熱、悪寒、盗汗→感染症>、<体重減少→腫瘍、感染症>、<増悪する下肢運動・感覚障害→腰椎椎間板ヘルニア、硬膜外腫瘍・膿瘍・血腫>、<夜間に増悪・運動で軽快→脊椎関節炎>、<前屈で軽快、後屈で増悪、大酒家、急激な糖尿病の発症や悪化→膵炎、膵癌>、<心房細動→腎梗塞、脾梗塞>、抗凝固薬・抗血小板薬→腎出血、副腎出血、急性硬膜外血腫>、<炎症性腸疾患、乾癬、最近1ヶ月の尿道炎や子宮頸管炎、急性下痢→脊椎関節炎>

基本的には問診と所見で内科的疾患を除外して、整形的疾患を詳しく検索する。
☆除外のため
①腹部大動脈瘤<半分くらいは誤診されるので注意が必要:診断困難>
多くは無症状だけど、巨大瘤だと腸管圧迫症状(下痢、嘔気、便秘)、尿管圧迫症状(頻尿、排尿困難)、大腿神経圧迫症状(大腿前面~膝関節の痺れ)、血栓で閉塞すると下肢血管閉塞症状(間欠性跛行、下肢虚血症状)
※瘤が破裂したら→突発性の激しい体幹部痛(腹部、腰部、側腹部)、低血圧、拍動性腫瘤
でも3つが揃うのは半分もない。あと、血尿を認めることもあるので尿管結石と間違われやすい。また破裂しても周囲の組織にカバーされて慢性破裂状態で安定することもある。
間違いやすいパターン
・背部痛と陰嚢、鼠径部への放散痛から尿管結石と誤診→55歳以上初発の尿路結石疑いならば、腹部エコーでAAAも確認する。
・心窩部痛と低血圧から心筋梗塞と誤診→背部痛、放散痛を確認する。
・右下腹部痛、心窩部痛と吐下血、消化管出血から消化管穿孔、憩室炎と誤診
※造影CTと心外コンサルト
とりあえず、降圧(内服ならACE-I、緊急でivがいるならジルチアゼム150mg/3V+NS50mlを1μg/kg/mim→1ml/hrとかニカルジピンとか)、脈拍数コントロール(β遮断薬)、鎮痛

②脊髄硬膜外血腫
神経根痛に由来する突発的な背部痛で出現→数時間~数日経過して(進行する)痺れや脱力が出現する。
↑脊髄の最外側部は下肢からの感覚神経(外側脊髄視床路)や運動神経(錐体路)があるので、脊髄が外から圧迫されると、下肢から上行するしびれや脱力を呈しがち。
また錐体路をガッツリ圧迫したら片麻痺になることもある。脳梗塞と誤診して抗血小板薬を開始したらヤバい。後頭部痛を伴ってたり、顔面を含まない麻痺だったりした時には注意する。検査はMRIのT1強調で矢状断、脊柱管内側に高吸収域を認める。
※回復のゴールデンタイムは48時間以内。

③尿路結石?(超コモン)、腎梗塞?(比較的稀)
・尿路結石:強弱のある疝痛+肉眼的血尿、脱水→夏・早朝4時台が発症ピーク
検査では腹部エコーやるといいけど、中高年での初発の尿路結石っぽい発作あったら、ヘリカルCT撮影した方が良さそう→1/3くらいで他の疾患を検出して、1/6は重篤やった
・エコーで腎盂尿管移行部、膀胱尿管移行部は見れるように勉強。
治療:NSAIDs(ボルタレン座薬25or50mg)→ダメならソセゴン15mg iv→それでもダメなら尿管ステントや砕石治療。芍薬甘草湯(鎮静、鎮痙、鎮痛)、猪令湯(利水)もよさそう
※水2L/日、肉塩控えめ、Caは良い。敗血症、AKI、疼痛管理不良なら泌尿器科コンサル

・腎梗塞:(一定の)側腹部痛、叩打痛とLDH(単独)高値と蛋白尿の3徵候。
エコーで腎実質のエコー輝度の上昇した領域を認めたり。造影CTで確定診断。
→治療はヘパリンivや降圧(ACE-I,ARB阻害)だけど、おとなしくコンサル

腎盂腎炎:側腹部痛などは腎梗塞、尿路結石とかでも認める。発熱があると注意
尿・血倍。ほとんど9割以上が大腸菌。普通の膀胱炎とかと違うのは黄ブ菌感染からの菌血症→敗血症がだいぶ怖いこと。尿路感染が敗血症の原因1位なので大事。
検査はエコーだけど検出率は微妙。単純CTで腎周囲脂肪織濃度上昇、造影CTで腎実質の濃度異常。
入院ならCTRX。治療効果判定は尿培養で。重症感強いならゲンタマイシン(5mg/kg)やアミカシン(15mg/kg)を追加。使い方は調べる。

経口でいけそうなら、シプロキサン、レボフロ(10日)、ST合剤(14日)

妊婦にはオグサワ(オグ1,サワ2。オグさわさわ。を1日2回)

覚えるのが面倒なら3T3xずつでも。

 

※ST合剤に関して。耐性化、催奇形性や妊娠末期の核黄疸などめんどくさい。優秀っぽいけど、トラブルを避けるために控える?男・高齢者なら全然使えそう。

尿路感染は耐性化に加えて、自然軽快、単発性、再発性、性別、複雑性、カテ関連、敗血症、さらには無症候、予防(妊婦)など色々な要素がこんがらがって糞面倒くさい。

結果、CTRXやシプロキサンの乱用→耐性化みたいになる。

どうせ思考放棄するなら大腸菌セファゾリンの方がまだマシな気がする。黄ブ菌にも効くし。

ちなみに、たまに腸球菌が検出されるけど、病原性はそんな強くないので慌てなくてよい。毒素も出さない。ただし、菌血症→感染性心内膜炎になると面倒なのできっちり叩く。治療はペニシリンかアンピシリンかバンコマイシン髄膜炎・心内膜炎がありそうなら、殺菌的にアミノグリコシド(ゲンタ・ストレプ)を併用。

腸球菌は病原性はそんなにないけど、堅い(アミノグリコシド通りにくい)し、耐性化しまくってるし(ペニ、アミノ、バンコ)、ST合剤も効かない(効くのはin vivoだけ、生体内では葉酸を放出する。デコイ?)から地味に嫌な奴。心臓にも腎臓にもベタベタ引っ付く粘着質な感じのヤツ。

 

腸腰筋膿瘍:腸腰筋=大腰筋+小腰筋+腸骨筋。血流豊富で、隣接する周囲組織からの炎症の波及で膿瘍形成。症状は色々あるけど、特異的なものあるわけではない。
腸腰筋が伸展してると痛いので、ストレッチャーが股関節を屈曲した状態で搬送されがち。だから、所見としてはPsoas sign とObturator signが有用。
原因不明の発熱+腰痛・側腹部痛・腹痛で疑って単純CT(発症6日以前だと検出率微妙)
一次膿瘍だと多くは黄ブ菌の単一感染(稀に大腸菌)、二次感染だと過半数が複数感染(ほとんど腸内細菌)→いずれにしても治療はドレナージと抗菌薬治療
化膿性脊椎椎間板炎とかも合併しがち?

・化膿性脊椎炎・椎間板炎:安静時にも継続する疼痛、脊椎叩打痛、夜間に増悪など
多くは皮膚から(黄ブ菌、DM患者ならGNR,嫌気性菌も)、他に菌血症(感染性心内膜炎)、尿路感染の3ルート
※神経根に炎症が波及したら放散痛も出てくる。
検査はとりあえずCRPと赤沈。画像検査はX線では最短2週間後に椎間板狭小化を認めるくらい。MRIでも発症早期だとよくわからない→診断つかなければ2週間後に再撮影。
腰椎罹患なら化膿性ぽい、胸椎疾患なら結核性ぽい
なんにしても血倍とってエンピリカルに治療。黄ブ菌、嫌気性菌、緑膿菌カバー→VCM+CTRX

・脊椎腫瘍<転移性:特に前立腺癌、乳癌、腎癌、甲状腺癌、肺癌、悪性リンパ腫
注目:50歳以上、6週間以上持続、誘因のない腰痛、安静時痛、夜間痛→脊椎叩打痛
X線)椎体の破壊や圧潰、椎弓根辺縁の陰影の不明瞭化or消失。→MRI
骨硬化性変化:前立腺癌、胃癌、乳癌(混合型)、肺癌 (混合型)
溶骨性変化:その他、高Ca血症をきたすこともある。
※高齢者の誘因のない圧迫骨折を見たときには特に疑う。他に多発性骨髄腫による圧迫骨折も疑う(造血能、血中・尿中Mタンパク→コンサルト)

・膵癌<初発症状のないやつが15%くらいあるので注意>
危険因子:家族歴、糖尿病、肥満、慢性膵炎、喫煙など
危険因子があって、他に説明のつかない腹痛、腰背部痛、黄疸、下痢、体重減少あったら膵癌を疑って精査へ。
→マーカー:CA19-9, Dupan-2, Span-1, CEA, CA50など。あと腹部CT(単純+造影)
→コンサル

これら内科的疾患をある程度除外してから整形的な診察へ
※実際はそんなに詳しく調べずに、red flagの確認と内科疾患を示唆する問診事項でざっくり除外する程度。質問用紙に○×で書いてもらうのもいいかも。