呼吸困難・酸素飽和度低下・喘息<心不全が意外と多い>
・ABC安定化、SpO2は90%以上を目標に。SpO2低下してたら血ガスチェック。
A:気道閉塞の確認:いびき様呼吸、舌根沈下、Stridor。高齢者、脳梗塞患者は高リスク。
B:呼吸不全確認:SpO2確認、酸素化。COPDの既往は必ず確認。ナルコーシスヤバい
C:ショック対応

検査:胸部xp(広く鑑別・除外)、血液(ガス、SpO2低下ならAガス)、心電図
まずは診察前の患者情報
→若年女性:過換気症候群、若年男性:自然気胸、縦隔気腫の率高い。
発症様式(救急隊などから聴取できる場合)
突然:気道異物、A解離、ACS気胸、肺塞栓
急性:感染、アレルギー、心不全過換気症候群、中毒
慢性:結核COPD、肺がん、塵肺、間質性肺炎
再発性:気管支喘息COPD、過敏性肺臓炎、過換気症候群
AMI、解離、緊張性気胸、気道閉塞など致死的なものを先に鑑別する。
胸痛の確認は先にやる:性状・程度→ACS、解離、気胸、気道閉塞などの確認。
AMPLEでリスク評価(話す余裕があるなら)
アレルギー:アレルギー性、アスピリン喘息、過敏性肺臓炎他
内服薬:薬剤性肺障害(ACE-I, β遮断薬)、経口避妊薬→肺塞栓、ステロイド→感染
既往歴:再発性の呼吸困難全般
最終食事:気道閉塞、アレルギー
出来事、発症機転:外傷→気胸、ストレス→過換気症候群
※労作で増悪しない呼吸困難→心因性の可能性が高い→ストレスとか日常生活
所見集めて鑑別(問診が無理そうなら先にやっとく)
・ざっくり印象:鼻腔開いたり、頸部、胸腹筋を使用、胸郭動く→異常
・呼吸数(頻呼吸の有無)、SpO2:呼吸機能に問題なければ低下しない。
・異常呼吸様式の確認
リズム・深さがバラバラ→脳幹機能障害疑い
速く深い→Kussmaul呼吸→代謝性アシドーシス(糖尿病、アルコール、尿素、乳酸)リンゴ
・呼吸音の確認:音と複雑音
呼吸音の減弱・消失→気胸COPD、呼気延長→気管支喘息COPD
連続性:Stridor(吸気時、気道)→rhonchi(呼気、低音、気管)→wheeze(呼気、高音、末梢)
断続性:fine, coarse crackleは鑑別困難なことも多い。
オマケ:肺炎の治療経過:雑音の変化:全吸気→初期吸気→後期吸気に変化
・採血(+血ガス、凝固)と胸部xp
浸潤影→細菌性肺炎、他に色々感染、腫瘍、膠原病、血管炎、出血など色々
胸部CTも?異常を探るプロセス
何も見つからない→「サイレントチェスト」循環、喘息、肺塞栓、全身性のやつ
まずは呼吸器、循環(A→C→B)、なさそうなら神経筋、全身性(代謝性)を考える。

実際の鑑別の順番は
①胸痛あるか確認→あったらACSリスク評価、心不全の徴候確認
②胸痛なし→呼吸器系(多いのは喘息やCOPD)の病変検索
③心臓も呼吸も問題なさそう→感染、貧血、腎、内分泌、アレルギー、精神

具体的に
①は末参照
②呼吸器(肺胞低換気)疑い→繰り返すなら咳喘息、繰り返さないならCOPD(急性増悪)を疑う。
・咳喘息:ガイドラインでも定義は微妙。問診(繰り返す、夜~早朝に症状増悪、季節性、アレルギー、間接喫煙、労作時増悪)から疑ってβ刺激薬(メプチンやベネトリンなどネブライザー)の治療的検査(実際には呼吸機能検査が必要なので対症療法やって、落ち着いたら後日精査)実際に喘息なら、治療が遅れるとリモデリングが起こるので、専門医でのステロイド吸入治療が大事になってくる。→ステロイド予防こそが治療の根幹!(パルミコートとか)
・実際のコントローラー吸入薬はステロイド+長時間作用β刺激薬合剤のアドエアなど
※重症で超緊急の時:ボスミン(0.3mg/0.3ml筋注)、リンデロン(8mg/2A)にNS100ml点滴+オメプラゾール(20mg/1V)にNS20ml緩徐静注+硫酸Mg補正液20ml緩徐静注
<リンデロンはコハク酸アレルギーが怖いから。硫酸Mgはイギリスのガイドライン参考>
☆入院適応:会話困難、呼吸数30/分以上、脈拍数120/分以上、室内気でpaO2<60Torr、ピークフロー<60%。これらの所見は高度重症度を示唆するやつ。。

COPD:病歴と患者像→高齢の喫煙者、緩徐進行の労作時呼吸困難+咳・痰。
身体所見は頻呼吸、口すぼめ呼吸、(重症だと胸鎖乳突筋の発達、吸気時の鎖骨上窩陥凹)
→胸部xpで肺過膨張所見とスパイロメトリー(これは外来)で閉塞性障害→診断可
治療は重症度にもよるけど、中等度なら(β吸入とステロイド・リンデロン、PPIのiv、喘息と一緒)、重症なら加えて、呼吸器内科緊急コンサル
※呼吸器だと他に、拡散障害、シャント、換気血流不均等分布があるけど…
病名を云々するよりも、呼吸状態を生理的にどう悪くなってんのか判断する方が良い?
A血ガスで慢性アシドーシス像、心電図で右心負荷(Ⅱ、Ⅲ、aVfでp波増高)、CT像
でも、確定診断はスパイロメトリーが必須。
③感染→肺炎:A-Dropで入院or外来の判断:市中ならユナシンorオーグメンチン、他はリスクに応じて起因菌判断、入院時肺炎も。
☆ここでもやっぱり心不全の除外が大事。うっ血性心不全の除外必要。心電図チェック。
A-Drop:Age→男70歳以上、女75歳以上。dehydration→BUN 21mg.dl以上、Respiration呼吸30/分以上、Oxyfen SpO2が90%以下、pressure→sBP<90mmHg、
1,2個あてはまるなら外来or入院→判断難しい
実際は見た目でやばそうなら入院ってのは結構大事。その辺がよく分からん時や、やばそうなのを見分ける力をつけるまではA-Dropに頼るのは全然あり。

☆☆☆☆☆☆☆☆
抗菌薬選択
①市中肺炎:6大起因菌ある。サンフォードだと、アジスロマイシンだけど。確かに6つカバーしてるけど、肝心の肺炎球菌にたいする効果は正直微妙。それなら、非定形肺炎のマイコプラズマ(乾性咳、咽頭痛、網状皮斑などから診断)、クラミジア(嗄声?)、レジオネラ(下痢、嘔吐、低Na、意識障害、他に頭痛・関節痛・筋肉痛など全身症状)+マイコプラズマ・レジオネラ尿中抗原から、なさそうと診断して、肺炎球菌、インフル桿菌、モラキセラに焦点をしぼって、アモクラ(オーグメンチン)。ユナシンあたりで良さそう。
非定型がよっぽど疑わしいなら、クラリスロマイシンとかアジスロマイシンとか、レジオネラだけならレボフロでもいいかも。
※オウム病はまた別。こっちは自然界・謎・強烈・致死的→ドキシサイクリン使う。
COPD、DM、腎・心不全など基礎疾患あり→レボフロキサシンとか
※実際はどこから菌をもらってきたのかが最も有用だったり。近所でマイコが流行ってたら、だいたいマイコだし。

②院内感染の肺炎:熱出たら→尿一般・沈渣・培養、胸部レントゲン、血培2セット
(HAP:hospital aquired pneumoniae:入院後48時間)
(VAP:ventilator aquired pneumoniae:挿管後48-72時間)
(HCAP:health care associated pneumoniae:医療関連肺炎:最近何日か入院してた)
入院4日以内なら、起因菌は市中と似ているけど、5日以降はクレブシエラや緑膿菌が顔を出す。胸部xpでの新規陰影出現と①38度以上の発熱②白血球の増加/減少③膿性痰の2つが出たら抗菌薬開始。
→入院4日以内ならロセフィンでオッケー(65歳以上は1g/日)、5日以降はセフェピム(1-2Gを8-12時間毎)+レボフロキサシン(500-750mgを1日1回)

誤嚥性肺炎:口腔内嫌気性菌→ユナシン(陰性桿菌は定着菌かもしれない)
嚥下リハなど、予防の方が大事。院内で緑膿菌疑ったら、ゾシンとかマキシピームとか

他のリスクとして
・アル中や老人ホームだとクレブシエラ(GNR、ESBL産生株、amp-C型酵素だとメロペンしか効かない。)黄ブ菌、結核、嫌気性菌、緑膿菌も。
※注意点:セフェピム、タゾピペ、セフタジジム。感受性検査で認知されない可能性がある。これら1つでもRやIが出たら、他のは使わない方が無難。おとなしくメロペン。
COPD:肺炎球菌、インフル桿菌、モラキセラ、レジオネラ、緑膿菌→入院不要ならレボフロ、必要ならロセフィン→誤嚥があるなら嫌気性菌カバーでユナシン→陰性桿菌カバーを広げたければタゾピペ。
・インフルエンザ後(2相性の発熱がヒント)→黄ブ菌、肺炎球菌→セファメジン追加?
性感染症、B肝、肝膿瘍、同性愛→HIV,ニューモシスチス肺炎→キノロン系。

※治療効果判定は呼吸数、呼吸困難、喀痰量、動脈血ガス分析を参考にした方が幸せ。


意識低下、意識障害
代謝→糖尿病性ケトアシドーシス→クスマウル呼吸確認
・貧血→眼瞼貧血所見、頻脈やふらつきなど確認
・腎→腎不全→体液貯留→尿量低下など→利尿、ラシックス20mgから開始
・アレルギー:食物の他、住環境の変化、引っ越し直後ってのに注意。→RASTで検査
・精神→過換気症候群→安静、ダメならホリゾン(BZ)10mg/2ml 筋注

血液ガス
まずは、pH:7.4±0.05, PaCO2:40±5, HCO3:24±2, PaO2 90±10,  4を目安に覚える
①Ph確認してアシデミア(<7.35)orアルカレミア(7.45<)を判断
②PaCO2とHCO3は一緒に判断←ややこしい(~ローシス、どっちに行こうとしてる?)
PCO2:45<なら呼吸性にはアシドーシス、<35ならアルカローシスになっている
HCO3:<22なら代謝性にはアシドーシ、24<ならアルカローシスになっている
基本的な考え方はPhの方向と同じ側のやつが原性(~レミア=~ドーシスのもの)
※Phアシ、PCO2アシ、HCO3アルなら呼吸性アシで代謝性にアルになろうとしている。
で、原性を確認した後はもう一個のヤツに動きがあるか。動いていない=急性期で代償がまだ開始していないと考える。
腎臓はゆっくりなのでHCO3の代償はゆっくり(数日かかる)。
逆に呼吸は割と早く代償される。(過呼吸気味になるだけだし)
ここで問題になるのが代償が完了してphが正常に戻った時にどっちが原因?って時と、PCO2, HCO3がどっちも同じ方向に行っている時。
③paCO2とHCO3各々の評価を行っていく。

 

 

※さらに、だいたいはAガスの代わりにVガスでの代用が可能。pH, HCO3はVガスから推定可能(V+0.03=AのpH, V-1.03=AのHCO3)だし、pCO2や乳酸値は静脈血の値が正常なら動脈血の値も問題なし。
※ただし、PaO2だけは代用できない。
じゃあ、どんな時に血ガス必須?→(肺胞がやられてガス交換できなくなって)低酸素血症になった時?これはSpO2で判断可能?
しかし、アシドーシスやPaCO2上昇(2型呼吸不全,呼吸性アシドーシス)の時もSpO2とPaO2は関係不明になる。
実際はSpO2低下していたら動脈血ガスするのが無難か。で、SpO2正常で採血に静脈血ガス追加して、CO2や乳酸上昇してたら動脈血ガスもとる方針にする?
・PAO2は肺胞内の酸素分圧。高地なら低いし、酸素マスクつけてたら高い。
・PaO2は肺毛細血管の酸素分圧
・SaO2は動脈血中酸素分圧:PaO2と酸素解離曲線で相関関係(SaO2:90%=PaO2:60Torr)でも、アシドーシスやCO2↑の時は右方変移して分からなくなる。
・SpO2はSaO2をパルスオキシメータで計測したもの。だいたい一緒。
※A-aDO2とは;肺胞内の酸素と肺毛細血管内の酸素の分圧較差。理想は0mmHgだけど、実際は膜があるから5mmHgくらい。
計算
A-aDO2=PAO2-PaO2。
PAO2はPIO2からガス交換でCO2と交換された後を計算してる。PAO2:40mmHgとPaCO2:50mmHgが交換されてる。→PAO2=PIO2-(PaCO2÷0.8)=150-(PaCO2÷0.8)
A-aDO2=150-(PaCO2÷0.8)-PaO2(血中濃度で代用計算が可能)
A-aDO2が開大するのは、一部の肺胞がつぶれているか、血流がシャントしているか。
ただし、これは画像でも分からない、診断に困った時に見るくらいでいいかも。
肺がつぶれるのは、肺炎や水腫、無気肺など→胸部xpで確認。→治療
血流が×の時は、肺塞栓とかくらい。
他には膜の浮腫、間質性肺炎とかもある。→DLCOで拡散脳確認。

①心血管系
※同時にTIMIリスクスコア→3点以上で緊急カテ
65歳以上、既知の冠動脈狭窄(50%以上)、過去7日以上のアスピリン使用、24時間以内2回以上の狭心痛、心筋逸脱酵素上昇、SY変化>0.5mm、3つ以上の心血管系リスク(家族歴、高血圧、高脂血症、糖尿病、喫煙歴)

循環器的身体所見
・頸静脈怒張:座位で怒張→右房圧>15cmH2O
・末梢浮腫:右心負荷大→肺塞栓でも心タンポも?
・血圧左右差:急性大動脈解離、閉塞性動脈硬化症など
・小脈、奇脈(吸気時に血圧10mmHg低下):心タンポナーデ
・皮下気腫:(緊張性)気胸、縦隔気腫(特発性食道破裂とか)
・呼吸性雑音:肺炎も
・心雑音:
・皮疹:水疱→帯状疱疹

他に注意点→体重増加、浮腫、高血圧。息切れ+wheezeは心不全の除外のために心電図!
血液検査でもBNP, (NT-proBNP)、トロポニンT


☆挿管
・適応:換気不十分、酸素化不十分、過剰な呼吸労力、気道確保(GCS8以下の持続的意識障害、口腔内出血、吐血、嘔吐)、呼吸不全:PaCO2>60mmHg, PaO2<70mmHg50%マスク、著明な肺水腫などの胸部xp異常
・手順
①鎮静:ドルミカム(BZ系、ミダゾラム)10mg/2ml/Aを5mg, 1ml静注。導入に
②鎮痛:フェンタニルオピオイド、麻酔)0.1mg/2ml/Aを0.05mg, 1ml静注
③筋弛緩:エスラックス(ロクロニウム、赤い蓋のやつ)50mg/5ml, 0.6mg/kg 40mg程度
注意
低血圧時(ショック時?)は①②③全部省略して意識化挿管awake intubation となる。怖い
喘息患者:BZ系は原則禁忌なので、ドルミカムは使えない。そんな時にはディプリバン(プロポフォール、白いヤツ)0.05ml/kg/10秒導入→0.03mlkg/ml維持。専用機器が必要。