下痢・血便・便秘
・下痢:まずは脱水チェックして、感染確認して器質的疾患、機能性疾患の順で調べる。
脱水評価:口腔内乾燥、腋窩乾燥、皮膚ツルゴール低下、窪んだ眼窩、毛細血管再充満時間延長
→血圧低下、脈拍上昇などバイタルが崩れ出しいたらささっと輸液。バイタル安定なら経口補液。
血便かどうか→水様性下痢の場合
→急性(2週間以内)の時→ほとんどが急性胃腸炎で95%以上は特に治療いらない。 
残りの5%をどこまで詰めるか。

全ては病歴。OPQRSTとSAMPLE急性胃腸炎以外の除外のため。急性・慢性の別なく聴取
Onset:発症様式(IBSにでも?)長期間安定。腹痛が排便で軽快、便と腹痛が一致。
provocation(増悪・寛解因子):(腹痛だけど)ストレスで増悪、夜間・排便後に軽快→過敏性腸症候群:夜間に下痢なし、絶食(24-72hr)で軽快なら薬剤・食餌性(浸透圧性下痢)
Quality/quantity(便の量・性状):大量→脱水なら、補正。血性なら細菌性?→抗菌薬
Region:(場所)旅行歴にしとく:旅行者下痢症、1カ月以内→細菌。以降→原虫疑い
Situation:随伴症状→急性冠症候群や虫垂炎の異所性妊娠っぽさには注意。発熱・血便・しぶり腹、激しい腹痛→大腸型の細菌性腸炎を示唆。
Time coarse:時間、時期。冬はノロとか。子供はロタとか。
おにぎり食後6時間以内→ブドウ球菌性。
6-48時間のやつは多い。参考:冬の牡蠣→ノロウイルス。夏の海産物→腸管ビブリオ。鶏肉・生卵→サルモネラ。給食のシチュー(?)→ウェルシュ菌
48h-1w:牛肉→腸管出血性大腸炎(EHEC無熱性血便)、鶏肉・生卵→カンピロバクター

Symptom(主訴)
Allergy(アレルギー):アレルギー体質をベースにした食物アレルギー。同じ物食べ過ぎ
Medication(既往、内服薬):既往でリスク。薬剤性下痢はNsAIDsや抗菌薬の他色々。
Post-/Pregnancy(既往歴、妊娠):再発しがちの慢性のやつか。妊娠は異所性妊娠注意
Last meeal(最終食事):細菌の推定。その他怪しそうなものは1週間前まで遡るべし
Event(状況):redflagの確認。脱水徴候。24時間以内に6回以上の水様便。激しい腹痛。38.5℃以上の発熱。
他疾患を合併しそうなリスクがあるか。70歳以上。免疫不全状態。すでに炎症性腸疾患。妊娠中。食品関連に従事・医療者。

・聞いて情報をまとめて、小腸型っぽいか大腸型っぽいかを考える癖つけるといいかも

☆治療:基本整腸剤入れる(ミヤBM、ラックビー、ビオフェルミンなど)
・急性胃腸炎:水様性下痢+嘔気嘔吐+排便で改善する腹痛、腹部所見、黒色便なし
脱水軽度ならOS-1で補液、ミヤBMあたりの整腸剤。脱水重度っぽいなら輸液、生食。脱水による腎機能が分からんので、一本目はKフリーで。

・感染性・細菌性
抗菌薬の投与が必要なのは基本的に大腸型の中の特定のもの→数はそんなでもないけど。関連情報が多すぎ。確認程度に。
要る:赤痢サルモネラ、カンピロ。患者の状況によって変わったり。免疫抑制とか

・感染・寄生虫性(1週間後):便中寄生虫卵は間欠的に排泄されるもの、基本複数回検索

過敏性腸症候群IBS
止痢薬:ロペラミド(ロペミンカプセル)

・入院後下痢:入院後72時間以上経過、過去60日以内の抗菌薬使用→CDっぽい
クロストリジウム(ロセフィンなどで腸内の嫌気性菌殺されて菌交代)
→CDトキシン(EIA法?)確認して、被疑抗菌薬中止。どうしても使いたいならCDに対してメトロニダゾールかバンコマイシン。実際ロセフィンとか広域のものが必要な時って、他の代替薬も嫌気性カバーしがちだし…。感染症内科コンサル?便中白血球は?
便培養を全例やると検査室の負担やばいらしいので検査はCDトキシンか内視鏡(S状結腸まで)くらいで、便培養は免疫不全者、炎症性腸疾患増悪との鑑別など限定的な人にやる。

※内分泌性下痢
※脊椎患者のfecal impaction で溢流性便失禁(肛門括約筋×で下痢でないことに注意)


☆血便:著明な場合はO157(腸管出血性大腸菌、毒素による出血、発熱は軽度)を疑う。他には赤痢、カンピロなど。直腸指診大事。内痔核からの出血は意外に多い。
検査:便中白血球→大腸粘膜の障害・破壊を示唆。あったら感染、偽膜性腸炎潰瘍性大腸炎・Crohn病疑う。
※最初のエンピリカルな抗菌薬はロセフィンで。


・学問的に?丁寧にやるなら
まずは腸管外から。急性胃腸炎様症状をきたすものとして
感染性:骨盤内の炎症、膿瘍、虫垂炎の波及、(特に異型)肺炎、敗血症(トキシン系)
非感染性:AMI、PI、解離、SMI、SAH、虚血性腸炎。腫瘍、消化管潰瘍、膵炎、甲状腺クリーゼ、ホルモン分泌腫瘍、副腎不全など、妊娠、緑内障でもあるとか…
↑これら全部挙げて鑑別は正直微妙?留意するくらいにとどめるべきか

んで、消化管による下痢での鑑別4種類(イメージには役に立つかも)
・浸透圧性下痢:腸管内のものによる浸透圧の上昇による。酸化Mg、乳頭、甘味料など
・分泌性下痢:多くの感染の毒素によるやつ、小腸型ぽい。他には脂肪吸収不良とか
・滲出性下痢:粘膜の障害・破壊、大腸型。感染でも抗菌薬必要な赤痢サルモネラがこれ、非感染のものだと、Crohn病、潰瘍性大腸炎、腸結核、大腸癌、腸リンパ腫など
・吸収不良、腸管閉塞・狭窄、運動異常:器質的な不都合。オペ後や消化酵素不足、DM。強皮症による腸管運動障害、腸管閉塞・狭窄、機能的腸管運動異常、甲状腺機能亢進


おまけ程度に
サルモネラ:人→腸チフス、腸熱。全身症状。南アジアとか多い。
肉食って、潜伏期が2週間くらいあって、非特異的前駆症状(風邪っぽい)があって発症。
1週:発熱、比較的徐脈→薔薇疹、脾腫→2週:肝脾腫、高熱→3週:腸出血、腸穿孔→解熱
なイメージ。典型症状は意外に少ないらしい。他の臓器(髄液とか)に飛びがち。
診断は症状から疑って、便・血・骨髄・皮疹(バラ疹)の培養。
治療:シプロキサン、レボフロ、ロセフィンなど。2週間くらい投与。髄膜炎あったら6週
腸炎起こすだけのサルモネラもいるけど、こっちは肉食って2日以内に発症。便は赤痢様、コレラ様どっちもある。便から検出。1週間以内に自然に治るので補液くらい。
例外的に抗菌薬を使うのは幼児、高齢者(50歳以上)、細胞性免疫障害(T他)、人工関節者
→シプロキサン、レボフロ、ロセフィン、ST合剤も可

赤痢:疼痛を伴う頻回の粘血便
青年層が輸入→汚染した手とかからヒト-ヒト感染(必要菌量は少ない)→1,2日潜伏して発症
症状は2相性:小腸型→大腸型。菌の移動に関連している?で合併症で関節炎、Reiter症候群、肺炎、角結膜炎、腎炎、溶血性尿毒症症候群など。
検査は便培養。治療は全例抗菌薬入れる。シプロキサン、レボフロ、ST合剤、アジスロ

カンピロ:卵、鳥肉。人畜共通感染症
卵、鳥刺し食って、2-5日潜伏→大腸型下痢→だいたい2,3日でおさまる。だから、抗菌薬は基本不要。
便培養は特殊培地必要だからそれを検査室に伝えることは覚えておく。グラム染色のGull-wingは役立つことはあるかも。
抗菌薬必要なのは重症っぽい症例と幼児・高齢者、免疫抑制者など。
抗菌薬はエリスロマイシン、シプロキサン、ドキシサイクリン
※菌血症起こしたカンピロ:免疫低下例に多い。多臓器に感染起こしうる。培養、ゲンタシン、ロセフィン

腸管出血性大腸菌(O157)→大腸型下痢だけど腎障害がヤバいやつ。便培養で検出。支持療法のみ
・毒素原生大腸菌(ETEC):開発途上国旅行中、飲水→下痢。シプロキサン、レボフロ。


☆大腸性下痢の3つを全部カバーするのはシプロキサンで何かわからん状態なら使うのは良いかも。ただし、キノロン系に耐性株か増えているのは事実なので、たとえばカンピロとかはgull-wingとか特定できそうなやつがあればエリスマイシンを選択する態度は重要かも
 
小腸型だけど。整形的に大事?
ビブリオ:腸炎ビブリオだと海産物摂取したあとに腸炎赤痢っぽい便が出る時もあるので、便培養は出す。治療は不要。
今回問題となるのは、Vibrio vulnificusってやつ。海水浴のやつは注意。
海水の正常細菌叢の一部。1/4死ぬ。病原性強い。
口から腸管に入って血液中に移行する敗血症のタイプと創部からの軟部組織・創傷感染型
①敗血症型:免疫不全例に多い。
90%以上が1週間以内に生牡蠣など生食して→突然の悪寒、発熱で発症→下肢メインの多発性転移性皮膚病変(70%以上)→過半数死ぬ。ショック起こしてたら90%死ぬ。
軟部組織病変:紅斑→出血性疱疹、小水疱→潰瘍→壊死
②創傷感染型:小さな刺し傷から感染することもあるので外傷はそんな気にしない。
免疫不全者(肝硬変、糖尿病など)が軟部組織の蜂巣炎、壊死性の皮疹(水疱形成あり)→必ず鑑別に挙げる。1週以内の牡蠣生食歴は特に怪しい。海関連の人も。
検査は便培、血培、皮膚培養→性状がなんか紛らわしいのでビブリオ疑いと検査室に報告する必要あり。
死にがちな緊急疾患なので、培養提出後は速やかに抗菌薬必要。
治療:敗血症にはミノサイクリン+セフタジジムorシプロキサン。壊死表皮にデブリ

コレラのvibrioは適切な輸液・電解質調節が大事。脱水蛍光強い。抗菌薬はテトラサイクリンとか。

寄生虫アメーバ赤痢(メトロ)とか

最後の吸収不良性下痢。
吸収不良症候群は特に脂肪の吸収が障害されるため、栄養障害、vitB12,脂溶性ビタミン障害が起きやすい。便中脂肪にはズダンⅢ染色。
他には炎症性下痢。
慢性下痢+消化性潰瘍→ガストリノーマ
慢性下痢+皮膚紅潮発作、副甲状腺機能亢進→VIPoma
慢性下痢+気管支喘息様発作、肺動脈・三尖弁閉鎖不全→カルチノイド症候群
疑ったら調べて対応。
※中年高齢者で下痢で来た人にはとりあえず、別のところでの大腸内視鏡検査は勧めとく

S状結腸内視鏡が必要な時:同性愛者、HIV、免疫不全、偽膜性腸炎の重症例、炎症性腸疾患と偽膜性腸炎の鑑別したいとき、アメーバ赤痢など

下壁梗塞だと心窩部痛、悪心、嘔吐、下痢おこることもあるらしい。


・便秘:3日に1回の排便までは正常とする。90%は原因不明
とりあえず、腸閉塞と大腸癌を除外。原因はほとんどわからんけど、薬剤歴(抗コリン薬、抗うつ薬抗精神病薬モルヒネ、Ca拮抗薬など)確認。
抗精神病薬からのパーキンソニズム疑うくらい?
☆高齢者が最近便秘になってきたor便が細くなってきたってのは癌を疑う。
勉強として:痙攣性便秘、弛緩性便秘、直腸性便秘
・痙攣性:ピクピクなって、有効な蠕動運動×。上行結腸でたまる。若年者、ストレス
痙攣→疼痛あり。上行結腸過ぎたらすぐ出るので間欠的に便秘と下痢を繰り返す。痙攣しているので、薬は酸化マグネシウムくらいで、刺激性のセンノシドとかは使わない。
・弛緩性:高齢女性、下剤乱用して筋力とか低下→動かない。持続的な便秘。
酸化マグネシウムとか使ってもいいけど、どちらかというと大腸刺激性のやつの方が効果はありそう。でも乱用したくない。腸管運動低下なら運動を促進させるガスモチン(gastricをmotility, 5-HT4刺激)は良いかも。
・直腸性便秘:便意を我慢しすぎている人。排便の神経が麻痺。直腸に便塊貯留。神経麻痺しているから便意はないし、弛緩性便秘も合併しがち。
治療は直腸刺激のもの。浣腸(グリセリン)か新レシカルボン坐剤(よくわからん。)

 

※内分泌性の下痢・便秘
下痢:甲状腺機能亢進症、副腎クリーゼ(急性副腎不全)、グルカゴノーマ、ビポーマ(VIPオーマ)、Zollinger-Ellison症候群(ガストリノーマ:膵十二指腸のガスとリン産生腫瘍)

便秘:甲状腺機能低下症、副腎クリーゼ(急性副腎不全)、原発副甲状腺機能亢進症/高カルシウム血症、低カリウム血症、Ca拮抗薬、褐色細胞腫、パーキンソン病治療薬、グルカゴノーマ、強皮症、糖尿病性神経障害など