動悸・頻脈:診断も大事、初期対応も大事、循環器コンサルトのタイミングも超大事。
心房細動も大事だけど、まずは全身の管理をしっかり行う。
脈拍の管理はあくまで対症療法くらいに考えておく。予後を改善させるわけではない。
①まずは意識とバイタルの確認。崩れていたらバイタル確保。酸素化も。ダメならACLS
②一過性なら心電図。持続性なら追加で不整脈コントロール
③心電図波形に応じた対応。循環器内科コンサルト

・一過性でも基礎疾患の評価は大事(虚血性心疾患、QT延長症候群、Brugada症候群、WPW症候群など)→否定しきれないなら循環器コンサル、否定的でも後日専門医再診。
不安が強いなら、ワイパックス(BZ半減期12時間、長め1mg3T3x)

☆☆☆☆
・心電図
⓪忘れがち:1mm=0.04秒、5mm=0.2秒、縦:1mm=0.1mV,10mm=1mV
5mm毎=300bpm, 5マス=25mm毎=60bpm
①P波確認(Ⅱ、Ⅲ、aVf)
②QRSでnarrowかwide(0.12秒=3mm以上)か確認。微妙?実際にはwideQRS頻脈を正確に鑑別できる基準てのはなさそう。(とりあえず、Brugadaの基準も確認。)
☆正常なQRS波と診断:1、Ⅱ誘導のQ波は1mm未満、胸部誘導でV1-V5で徐々に大きくなって、V6でちょっと小さくなる、V5のR波が25mm未満の3点。
んで、P波にくっついてQRS波が出てたらだいたいセーフだし、P波が出てなくても、narrowQRSの発作性上室性頻拍、Afib、AFlutterは正常なP波は持たない。
→セーフな同棲頻脈なら原因の検索と解除。
治療(だいたいアンプルの半分量くらいう使いがち)

発作性上室性頻拍:ちょっとだるい。眼球・内頚動脈圧迫試験。眼球圧迫は網膜剥離とか、眼合併症が怖いし、内頚動脈圧迫は血栓飛ぶのが怖い。脈を落ち着けるアデホス(アデノシン3リン酸)は気管支喘息の患者には禁忌だし…。息こらえならセーフ?(3回やる)
最初からCa拮抗薬使う?いや、やっぱりアデホスはまず使う。アデホス3号(20mg/2ml/Aだけど、使うのは10㎎1ml素早く静注したあとに、NS10mlで後押し。20mg使うと心停止することもあるので、10㎎にとどめとく。
効かなかったらCa拮抗薬(ワソランの方は降圧作用ないので、血圧低下時に使いやすい、でも心臓に対する陰性変力作用はあるので、やっぱり心機能低下時には使いたくない。)
①ワソラン(ベラパミル)5mg/2ml/A+NS8ml→10ml:5mg/10mlにして、2㎎(4ml)使用
②ヘルベッサー(ジルチアゼム)50mg/V+NS10ml→50mg/10mlにして、20m(4ml)使用
→ヘルベッサーは使用後降圧あるので、血圧はモニターする。どちらも徐々に増量可。
アデホスさっと入れるけど、ワソランは慎重に1mg/10ml/分くらいでゆっくり落とす。

心房細動:ターゲットは房室結節。(脈はしっかりとって、バラバラなのを確認する)
β遮断薬は洞結節の自動能や房室結節伝導能を抑制して心拍数低下させる。心不全にも使えるのが強み。
房室結節がターゲットなら、Ca拮抗薬も使える。心不全がないならどっちがいいか?
→RATAF研究(N=60)ではカルシウム拮抗薬が良かったみたい。
心不全がない場合。ワソラン、ヘルベッサーのどっちかを使って、心不全がある場合はβ遮断薬(プロプラノロール2㎎静中)としよう。
・他に抗凝固療法やcardioversion、原因検索とかあるけど、手に負えない。コンサルト。
原因検索はやっていいかも。だいたい加齢→線維化だけど。
WPW+心房細動とかは最悪。細動の刺激が副伝導路のKent束を通って全部心室に行くから脈拍が300-400bpmくらいになる。こうなると心房細動でも失神する。
基礎疾患で心臓弁膜症・心筋症・虚血性心疾患(狭心症心筋梗塞)などはあるかも
コンサルト前にCHADS2とCHA2DS2-DASCくらいはとっとく。
・CHADS2
→congestive:うっ血性心不全、Hypertenison:高血圧、Age:75歳以上、DM:糖尿病、Stroke、TIAの既往は2点。→2点からワルファリン推奨
CHADS2で0、1点だった場合、よくわからん微妙な症例は↓
・CHA2DS2-DASCで拾い上げる。
→congestive:うっ血性心不全、Hypertenison(sBP≧140mmHg):高血圧、Age:75歳以上は2点、DM:糖尿病、Stroke、TIA血栓塞栓症の既往は2点
+Vascular:冠動脈疾患、Age(65-74歳だと1点換算)、Sex category:女は1点
ここでも0点なら本当に低リスクだからオッケー。2点は抗凝固推奨。1点は微妙。
HAS-BLEDのスコアはたぶんいらない。
自分でフォローするつもりがないなら、簡単にはワルファリンは処方しないこと。

虚血性心疾患、
心電図でみる
QT延長症候群:QTが延長、0.44秒(2大マスちょっと)でもこれは何かの式で補正したうえでのやつだから、心電図からパッとわかるものではない。先天性とか薬剤性とか。
Brugada症候群:coved型とsaddle buck型のST上昇
WPW症候群:Kent束からの副伝導路で頻拍。Q波のところのΔ波
WPW症候群だと、心房細動を起こしやすいので注意。さらに一般的な上室性不整脈の薬は全部禁忌。副伝導路から糞みたいに電気刺激ふが出まくるので普通の頻拍の2倍くらい早い(300bpmくらい)→そこで初めてNaチャネル阻害系

☆wideQRSだった場合というか、ACLS。
頻拍の時
①頻拍確認
②ABCDの把握、維持
③持続的頻拍が低血圧・急激な意識障害・ショック徴候・虚血性胸部不快感・急性心不全を引き起こしている。要するにほぼ心原生ショックと判断したら
→鎮静下同期cardioversion(心拍と同期してRonTにならない時を見計らって弱ショック)
→Biphasicなら100Jスタートで、2回目は150J, monophasicなら150J開始で2回目360J
血栓症のリスクには注意する。48時間以内の発症であることは確認すること!
+多形VTなどで同期できない場合は出力上げる。(Bi:150J, 200J/ mono:300J, 360J)
④バイタルとかは安定していて、wideQRSの時
→規則的かつ単形性の時だけ、アデホスで良さそう。他心室性の抗不整脈薬、コンサルも
⑤narrow QRSの時→上でやった上室性頻拍の対応。

※鎮静にはドルミカム(BZ系、ミダゾラム10mg/2ml/A+NS8mlで1mg/mlを半分5mgiv)
→持続だと0.5γスタート。1mg/mlで50mg/50ml作る。1mg/mlだから50kgだと1γ=3ml/h→0.5γ=1.5ml/h

・wideQRS=心室性頻拍の抗不整脈
効果自体は1~Ⅳ群全部あるので、使い分けの問題となる。
ざっくり
基礎疾患がない心室期外収縮(しょぼい)→1群:症状強くてQOL低下ある時には1bのメキシレチンを使う。副作用が少ないので。
基礎疾患がある心室期外収縮、特に運動で増悪→Ⅱ群のβ遮断薬。これは基礎疾患のある人に、Ⅰ群の治療効果試してたら死にまくったため、安全なβ遮断薬使おうとなった。
運動に関係ない心室頻拍・突然死→Ⅲ群のアミオダロン(アンカロン)。基本的には除細動器植え込みが第一選択だけど、除細動器が効かない・植え込めない時に薬を使う。
器質的な何か(流出路狭窄とか)がトリガーになってるかも→Ⅳ群のCa拮抗薬(ベラパミル=ワソラン)←右室流出路起源単形性心室頻拍とかいうの。
☆アミオダロンはACLS(pulse less VT/VF)でショック+アドレナリン(1mg)ivの次のサイクルでショック+アミオダロン(初回300mg, 2回目150mg)と使われるくらい強力。
植え込み型除細動器との比較試験でもLVEF>35%限定なら同等の効果が示されている。

・さらに、Ⅰ群の抗不整脈薬…
特徴など。
1a群:心筋の細胞の活動時間を延長させる→QT時間延長<Torsade de pointes>
→上室・心室どっちも使えるけど、QT延長症候群には禁忌。助長する。
副作用で抗コリン作用<キニジン→下痢・嘔吐、ジソピラミド→尿閉・口渇>→前立腺肥症や緑内障では禁忌。
1b群:QT時間短縮+チャネルへの結合・解離の速度が速い→拡張時間が長い心房だと拡張している間に外れてしまうので効果が発揮できない→心室性に使う。副作用も少ない。
1c群:QT時間不変+チャネルへの結合・解離の速度が遅い→いつまでたってもくっついているので、ブロック作用が出る→QR時間が延長。
→上室・心室どっちも使えるけど、wideQRSには使えない→結果的に上室性に使う?

☆実際の所、心室不整脈(wideQRS)では1aは副作用多いし、ⅠcはwideQRSに使えないしで、副作用の少ないⅠbのリドカイン(キシロカイン)がまずは使われる。1回50㎎を1,2分で緩徐に静中。
救急カートにリドカインがあるのもこういった経緯があるため?


※Brugadaの基準いる?→wideQRS頻拍で上室性頻拍+変行伝導か、心室性頻拍かの鑑別。
・変行伝導:先行する心刺激の不応期の時期に上からのインパルスが来ると、インパルスの心室内伝導が異常に遷延する。結果、上室性頻拍でもwideQRSになりうる。
変行伝導を伴う上室性頻拍=全胸部誘導にRSパターンがあって、全部のRS間隔が0.1秒(2.5mm小マス)未満で、房室解離(QRS波形と全く関係なくP波が出現)がなくて、1,2,6誘導でVTとする波形基準がない。以上全部を満たしたら、変行伝導を伴う上室性頻拍、他はVT
※wideQRSで房室解離がない→Pから刺激が出ているけど、脚ブロックで遷延。ありがち。

原理的なやつ(PSVT)
洞結節と房室結節はCa活動電位でCa拮抗薬はここに効く。
他の部分(心房筋、心室筋、副伝導路)はNa活動電位でⅠa型の薬はここに効く。
PSVTは上から洞頻拍、心房頻拍、房室リエントリ性頻拍、房室回帰性頻拍の4つに分類されるけど、Ca拮抗薬は心房頻拍以外の3つに効く。Na阻害は2か所に効く→まずはCa拮抗薬を選択する。効果がなかった場合にNa阻害をトライ。
ここでアデホス。洞結節、房室結節にはAch活性化Kチャネルがあり、これがAch(副交感神経↑)で活性化されて房室伝導抑制されるんだけど、これはアデノシンも作用することができる。ATP→アデノシンとなって房室伝導を一過性に強力に抑制できる。ちなみに、心房筋にもAch活性化Kチャネルはあって、アデホスがしっかり効いてくれることがある。これをアデホス感受性心房頻拍というらしい。薬を使う順番はCa拮抗薬→アデホス→Na阻害薬がいいかも。

不整脈とかまあ、色々なところでのCa拮抗薬orβ遮断薬かの問題は欧米だったらβ遮断薬一択だろうけども、日本だと冠攣縮狭心症(Ca拮抗薬だけ効く)の問題があり、どうしたらいいのかは全然分からん。β遮断薬(オノアクトとかプロプラとか色々)使いたいけど、保険適用も微妙な感じだし、逆らわない。
でも、心機能低下例にワソランとかジルチアゼムとかポンポン使ってると痛い目を見そう。Ca拮抗薬はリバ-スが非常に難しい(Ca大量投与しかない)。β遮断薬はグルカゴンを使う。
あと、ワソラン(ベラパミル)って結構禁忌が多い。
WPW症候群による心房細動、Wide QRS頻拍、β遮断薬との併用、2度以上の房室ブロック、収縮障害性心不全


・徐脈:50bpm未満 ACLS
意識、バイタル、モニタ、酸素確認、ルートつなげる。
徐脈が意識障害、低血圧、ショック徴候、心不全など起こしているか確認
起こしてなかったら経過観察
起こしていたら
硫酸アトロピン0.5mg/ml/A 0.5mgずつ静注する。5分間隔で繰り返す。最大3mg
硫酸アトロピンが無効ならば
経皮的ペーシング
イノバン(ドパミン)使う。150mg/mgだから1γ=1ml/h、2γスタートだから2ml/h
専門に緊急コンサルト
硫酸アトロピン=抗コリンの作用。副作用もそれ相応。緊急だと気にしてる場合じゃないだろうけど。