電解質異常:補正と原因検索。NaとKとCaと糖
心不全と腎不全合併して治療どうするのかは2内の先生に聞いてみる。

低Na血症の場合<低浸透圧の低Na血症のみ治療が必要>
データの順:血漿浸透圧→尿中浸透圧→この辺大事→尿中Na
①まずは輸液の混入による偽性低Na血症を疑って再検。次から
②血清:Na, BUN, Cre, UA, 浸透圧(実測), 糖。尿中:Na, K, 窒素, Cre, UA, 浸透圧
甲状腺機能(T3、T4、TSH)、副腎機能(低血糖・Na・Chol、高K・好酸球など?)
血漿浸透圧を確認し、<280mOsm/Lであることを確認する。高浸透圧なら偽性。
④尿中浸透圧(100未満)と病歴(多飲、溶質不足など)で水中毒を確認。尿比重も低下。
⑤尿中浸透圧100以上だったら、ADH分泌はされてる。ここの鑑別は大事。
細胞外液量増加(心・腎不全、ネフローゼ)→Naは絶対に入れない。
細胞外液量正常(SIADH他内分泌系)→若干面倒
細胞外液量減少(嘔吐、下痢、利尿薬、アジゾン病)→生食での補正するのはここだけ

具体的に
血漿浸透圧
・浸透圧高値=高張性→溶質→高血糖、高浸透圧性利尿薬。血糖100上昇でNa1.6低下
※高度高血糖(400以上)では血糖100上昇でNa2.4~4くらい低下になるらしい。
・糖尿病性ケトアシになっていないか確認、意識障害起こして、アシなら迅速に対応。
治療:ケトアシなら、緊急対応。ただの高血糖ならあせらずゆっくり補正。とはいっても普通の高血糖でそんなに高Naにもならないだろうから、高Naになるくらいの高血糖はやばそうかも。ちょっとしたやつならやっぱり生食?
・浸透圧正常=等張性→脂質異常症、高蛋白血症。蛋白1・中性脂肪460上昇でNa1低下
この辺は外液を入れて薄めるくらい?長期的には食事指導とか?

④尿比重から尿中浸透圧を概算できる。比重の下2ケタ×25~40=尿浸透圧
※比重1.010 なら10×25~40=250~400。浸透圧100未満は比重1.002~1.005くらい
治療は水制限。輸液はしない。

⑤まずは細胞外液量を評価。心不全除外は大事。
増加:心・腎・肝不全→頸静脈怒張、浮腫。疾患の既往、エコー
心不全だったら、治療は水分制限、利尿剤。
→腎不全なら前、腎、後どこ不全か〈前が多い〉病歴や尿中Na、FENaとかで確認
尿カテ入れて、尿量チェックしながら
・腎前性:輸液(心不全がベースにあることが多い。酸素:NPPV入れて、モニターしながら、250mlくらいの少量生食を輸液して利尿薬併用したりする。とはいっても心不全の原因によっても治療法は違うから、まずはクリニカルシナリオに沿って治療するのがいいか)
※浮腫があっても肺水腫増悪しなければちょっと安心
心不全がない場合は輸液して薬剤性:NSAIDs, ACE-Iなどは中止。敗血症なら抗菌薬
・腎性:利尿薬、フロセミド点滴静注40㎎を分2で静注。ステロイドで間質性腎炎になっているならステロイド中止したいが、この辺は微妙。
・腎後性:エコー確認して水腎症がなかったら尿道カテーテル留置。脱水予防にT1液で補う。尿量の2/3くらい。
水腎症があったらすぐに泌尿器科コンサルト
☆どうしようもない時は血液透析だけど…、
適応は、①代謝性アシドーシスph<7.2、②中毒:リチウム、エチレングリコール、③高K:K>6.5、心電図変化、④肺水腫。⑤尿毒症

減少:液果乾燥、皮膚ツルゴールの低下。胸部エコー
治療は生食の輸液。Naも外液もともに低下している。外液の補充が完了された後から急にNaが回復しだすので、こまめにチェックするのが大切。
最初は普通の生食。500mlで1日分のNaが補充可能。+1000mlくらいで追加してみる。
ざっくり試算:1日維持は77mEqでNS500ml分。1000mlで154mEq追加。体重50㎏なら3mEq/L/日で少しづつ増やしていける。これに食事の食塩もあるから、だいたいオッケー
これで上がらなかったときに3%NaCl(普通のNS400ml+10%NaCl120ml)を30ml/hくらいで
4時間毎に確認。体重50㎏なら血液量は4.6 Lくらい

正常:血漿浸透圧低くて、尿中浸透圧がある程度あって、外液もそこそこ。
→尿中Na確認。40以上ならすごい怪しい。20~40ならちょっと怪しい。
参考に、BUN<10㎎/dl、FENa>1%、FEUN=55%、生食負荷で改善せず、水制限で改善
※FENa=(尿Na/血Na)÷(尿Cr/血Cr)×100
SIADHっぽいとなったら、改めて、利尿薬の使用歴、甲状腺機能、副腎不全、腎不全、Reset osmostat(慢性経過で低Naの状態で安定している。症状なければ問題なし)
Salt wastingってやつ:塩が垂れ流し
MRHE(加齢でRAA系に対する反応性低下→塩が出ていく。水も出ていくので代償的にADHが上昇してる。)
腎障害でも起こりうる
頭部外傷・脳血管障害後でも起こりうる。CSWS(Cerebral Salt Wasting syndrome)というらしい。スパズムを助長する。高BNPがヒント。生食に反応し、1カ月で自然治癒する。

SIADHの原因
頭蓋内病変(髄膜炎など)、肺小細胞癌、胸腔内圧上昇、抗精神病薬抗癌剤など
肺小細胞癌(NSE,proo-GRPCEAとCYFRAも?)
抗精神病薬は割となんでも低Na血症起こしうる。


高Na血症の場合。145以上の時
だいたいが水飲んで改善する脱水が原因。他は利尿薬、嘔吐下痢、熱傷。治療は飲水。
高Naも高度だと意識障害で飲水できない。そんなときは1号液で脱水と高Na両方を補正。
症状あったりすると積極的に5%ブドウ糖液を使う。
参考:5%ブドウ糖液を体重x4ml(50㎏なら200ml)投与するとNaが1下がる感じ。不感蒸泄とか尿量でも変わってくるので、安定するまでは2-4時間おきに採血確認。
慢性なら体重x1ml/h=体重50㎏なら1200ml/日。ブドウ糖液2本と3号液2本くらいで。
原因が分からない時に検索
①尿浸透圧
800以上なら通常の反応。高Naだから積極的に濃くしてる。
800以下ならデスモプレシンテストで確認。中枢性尿崩症か腎性尿崩症か。
尿浸透圧300未満の時
デスモプレシン10μgを点鼻し、2時間尿浸透圧と尿量30分毎チェック。
→浸透圧が50%以上上昇していれば中枢性、反応なければ、腎性
尿浸透圧300~800の時
同試験
→浸透圧が60以上(15~50%)以上上昇なら中枢性、反応なければ腎性
※脱水のある完全中枢型尿崩症であれば、脱水補正後、尿浸透圧300くらいに低下。
治療
中枢性:デスモプレシン10μを眠前点鼻
腎性:電解質補正。原因薬剤(リチウムやゲンタマイシン、コルヒチン他色々)中止。治療可能な原因がなければ塩分制限+サイアザイド利尿薬。
中枢性尿崩症の原因疾患:外傷、くも膜下出血低酸素脳症、脳腫瘍、転移性脳腫瘍、サルコイドーシス、脳動脈瘤脳炎髄膜炎など、頭蓋内疾患諸々。


・低Kの場合<心電図とって、血ガス(VガスでOK)も念のため>
多くは利尿剤、下痢、嘔吐。低Mgも結構多い。低Kだとしびれけいれん、周期性四肢麻痺起こしやすい。
低K<2.5mEq/Lだったら腎機能を確認しながら、すぐに補正。心電図も確認する。
治療は塩化カリウム(スローケー)1回2錠、1日2回食後
利尿剤だと低Kになりなりやすいので、K保持性のスピロノラクトンとかに変更したり。
治療反応性が悪い時は低Mg血症で尿中へのK排泄が促進されてたりするので注意。
原因鑑別:多くはKの摂取不足
検査では尿中K/日が正確にKの排泄量をみれるけど、畜尿が必要なので、あまりやりたくない。TTKGも集合管での大量の尿素の再吸収があることから、計算があてにならない。
→腎性のK喪失か、それ以外かは病歴から判断するのが無難か。尿K/尿Cr<2も?
腎以外の原因:Kの摂取不足。嘔吐・下痢・下剤での喪失。細胞内への移動(インスリンやCa拮抗薬、カテコラミン。12時間以内の急なKの変化ではこれを疑う。)
腎性の喪失:血圧上がっていたら、原・続アルドステロン症、クッシング、甘草の偽性疑って、血症のレニンとアルドステロンを測定。確定のための負荷試験とかは専門へ。
血圧正常:血液検査で尿細管性アシドーシスとかMg欠乏とかを確認する程度で大丈夫?
☆色々面倒くさいから、代アシなら、尿細管性アシと下痢を、代アルならアルドステロン過剰、異常ないなら、尿細管障害、低Mg血症を考えるくらいでいいかも。


TTKGはもうこれからは計算しない?これも聞いてみる。
・高Kの場合。危険。致死的。でも、K<5.5mEq/Lくらいなら心電図変化は稀。
高Kを確認したら→まず再検。溶血。偽性が多い。その間に心電図くらいとっとく。
症状はあんまりでなくて、最初の症状が心静止なんてこともある。→こわい
心電図変化は①T波の先鋭化→②P波の消失→③wideQRSの順
鑑別よりもまず対応。
K5.5以上ならすぐ介入。
①心電図確認し、期外収縮とか心電図変化が頻発してたら<不整脈予防、心筋興奮抑制>
→グルコン酸Ca10ml/Aをゆっくり5分(ここ大事)かけて静注。
②緊急処置として、GI(グルコースインスリン)療法。ヒューマリン5U+50%ブドウ糖液2A40ml静注。
細胞内に取り込むだけ。血中からはK移動するけど、体内には残っている。 
③Kを体外排泄するために、フロセミド20mg投与で腎から排泄。陽イオン交換樹脂(仮メート、ケイキサレート経口15~30g/日)で腸管から排泄。
→やばそうなら数時間毎に再検して効果判定。
※原因検索:尿中Kくらいは確認してみてもいいかも。
多いのはKの過剰摂取(生野菜とか果物とか輸液)、腎機能低下に伴うKの排泄低下。薬剤性、他にはKの細胞内シフトなんてのもある。
化学療法中なら腫瘍崩壊症候群もある。外液(アシドーシスになるので炭酸水素Na含有がベター)と利尿薬がじゃぶじゃぶ外に出す。

おまけ:
アニオンギャップ非開大性の代謝性アシドーシスではpHが0.1低下するごとにK0.5mEq/L上昇するらしい。開大性なら不変。
代謝性アルカローシスではK上昇ちょっと抑えめで、pH0.1上昇でK0.1-0.4程度上昇。


高Ca血症の場合:90%以上が悪性腫瘍か副甲状腺機能亢進症。心電図でQT短縮
症状は便秘・嘔気・嘔吐・食欲不振・多尿など腎不全、尿路結石、意識障害とかも
検査:intactPTHとintactPTHrP。低AlbならCa+(4-Alb)で計算
悪性腫瘍による高CaならPTHは20以下に抑制される。
副甲状腺機能亢進ならPTH増加してる。
他の原因として、炭酸リチウムの長期使用、vitD製剤、家族性低Ca尿性高Ca血症なんてのもある。結核甲状腺機能亢進でも上昇。腫瘍だったら肺癌・乳癌・多発性骨髄腫・リンパ腫・白血病→画像検査(xp、CT、骨シンチなど)
補正は生食がベター(Naと一緒にCaも排泄されるため)

☆腎機能低下した症例でvutD製剤を常用量で使っていると高Ca血症→腎機能の低下促進につながるので注意。
腎機能低下例では活性型vitDが減るので骨粗鬆症予防にvitD製剤投与→vitDが腸管からのCaの吸収を促進→尿細管の中も高Ca→ヘンレ上行脚にあるCa sensing receptor(CaSR)がCa濃度の上昇を感知してCaの再吸収を阻害→多尿→腎脱水→腎機能障害
※↑の原理。Caの再吸収はClの再吸収に依存している。Clが再吸収されるとマイナス荷電が外に行って、管内は陽性に荷電→陽性のCaは管内から押し出された結果、再吸収される。
・ここでCaを再吸収しないためにClが再吸収されないとどうなるか。
で、Clの再吸収はヘンレ上行脚の浸透圧の上昇(つまり尿の濃縮力!)を決定している。具体的にはNa-K-2Cl共輸送体(ループ利尿薬が阻害する所)。ここが高Ca血症になると、管内のClを濃くしようとして共輸送体の所を勝手に阻害してくれる。高Ca→ループ利尿薬と同じ作用となって多尿。
・最後の細かいところ。ループの仕組み。尿はヘンレを下行していくにつれ濃くなって、ループした後はNaClだけが管から抜けてまた薄くなる。その代わりにループ周囲(?)の髄質にはNaclが行って濃くなる。薄くなった尿が遠位尿細管と集合管でまた濃く(最後の水再吸収)なるんだけど、上行脚が阻害されてると、薄くなりきれない尿と、濃くなりきれない髄質との間で尿の再吸収ができなくなる。その結果。垂れ流しの多尿の状態になる。

低Ca血症の場合
症状はしびれやテタニー、トルソー徴候。心電図でQT延長。
検査はPTH, P, ALP, vitD, 腎機能
副甲状腺機能低下、vitD不足(低P伴う)、腎不全。他には過換気症候群、膵炎とか?
症状なかったら
経口Ca剤(カルタン?)とvitD(カルシドールとか)投与
症状あったら↓
グルコン酸Ca(カルチコール):85㎎/mlを10ml、5分かけて静注。
低Mgあったら補整。


高血糖
糖尿病性ケトアシドーシスの緊急対応
①生食を1000ml全開で投与
②重度アシドーシス(ph<7.0)ならメイロン40mlを静注
③速効型インスリン(ヒューマリンR)を0.1U/kg→5~6Uくらい静注
インスリン1単位で血糖30㎎/dlくらい低下すると覚えとくといいかも
④その後は0.1U/kg/hrで持続静注し、50㎎/dl/hくらいでペースで低下させる。
※ヒューマリン(1000単位/10ml→100単位/ml)→HuR0.5ml+NS49.5mldで1U/ml
⑤生食が1000ml入ったら200ml/hに減速する。
⑥血糖値が250㎎/dlまで低下したら生食から5%ブドウ糖液に変更する。測定こまめに
⑦Kが4.5まで低下したらKの補充も行う。KCL20mEq+生食500mlで補正。原液ダメ。
Kの値にも注意する。予測しづらい。不整脈怖い。
※心電図モニター下で1時間毎に血ガスチェック。入院。コンサルト
肺水腫に注意。胸写。HbA1c, 抗GAD抗体、ピルビン酸、CPR、畜尿、エコーなどで精査
→血糖測定とスライディングスケール
・極端な高血糖になるとインスリンは分泌量低下+抵抗性になり悪循環に入る。治療でこれが解除されると、血糖は急激に改善する。加減を間違えると下がりすぎる結果になるので注意。

低血糖
補整
ブドウ糖:10-20gか50%ブドウ糖液40ml(2A )静注。;5%ブドウ糖液は脳浮腫の危険あり、使わない。
注意:補正前にビタメジン(vitB1,6,12)200㎎を静注する。低栄養患者に急にブドウ糖入れると、エネルギーの代謝がすごい亢進する。すると、vtiB系がすごい使われて欠乏する。
リフィーディング症候群というらしい。K,P,Mgも低下するみたいなので、フォローは大切。
神経学的所見が出て、脳梗塞と間違うことがあるので注意。
原因が長期作用型インスリン・血糖降下薬など面倒な時、原因不明、血糖が戻らない時、他に独居、経口摂取負荷、夜間受診では経過観察入院が望ましい。