浮腫:心不全深部静脈血栓症は必ず除外すべき。
病態
・静水圧の上昇→局所(DVTで下肢、SVC症候群で顔面)、全身(心腎肝不全)。
・低Alb血症で膠質浸透圧低下(低栄養、吸収不全症候群、ネフローゼ症候群、肝不全)
・血管透過性亢進(炎症、アレルギー、薬剤性)
・リンパ管閉塞:腫瘍、リンパ管郭清術後
・ナトリウム貯留:肝腎不全、ネフローゼ、~説
ラシックスなどで水を抜くのは静水圧上昇のタイプだけ?
・情報収集OPQRSTA
Onset:急性発症or緩徐発症か
Provocation:増悪寛解
Quality/Quantity:圧痕性or非圧痕性、前脛骨に圧痕性浮腫=3kg程度体液量増加
Region:分布(局所、両側性、全身性)
Situation:随伴症状(疼痛、発赤、発熱、起坐呼吸、息切れ、呼吸困難)
Timeとtaijuu:いつ頃から?日内変動?体重増加は?→静脈うっ滞,特発性

AMPLE
Allergy:アレルギーで血管透過性亢進
Medicine:薬剤性(NSAIDs、ステロイド、降圧薬、ピルなど)
Past:既往歴(心・腎・肝疾患の既往歴)、手術歴(リンパ管郭清とか?)、変形性膝関節症
Last meal:食物でアナフィラキシー
Event→enviroment:職業歴、家族歴、

具体的に鑑別
①静水圧の上昇あるか。45度、4.5cmの静水圧、V-scanでIVC径、呼吸性変動でもいい。
①a静水圧上昇+全身性→心腎肝不全疑って、胸xp, 心腹エコー、血液、BNP、尿検査
①b静水圧上昇+局所性→静脈閉塞による局所:下肢静脈、上大静脈、肝静脈、肝部下大静脈
→エコー、画像造影CT、D-dimer→DVT、SVC症候群、Budd-Chiari症候群
②静水圧正常→圧痕確認<圧迫して40秒以内に戻るならfast edema.異常ならslow edema>

全身性↓
③aすぐ戻る→低Albっぽい。原因検索。血算、生化、好酸球、IgE、尿蛋白。(便中卵?)
   bゆっくり戻る→慢性、低Albの他、血管透過性亢進するもの。検査は一緒
   c戻らない→非圧痕性浮腫→甲状腺機能低下orBasedow病疑いで甲状腺機能検査
局所性↓
④aすぐ戻る→圧痛・発赤・熱感確認して、血算。①bでもあるけど、静水圧正常でも局所性の浮腫はどっちかというと場所の方が大事?
片側下肢ならまず、深部静脈血栓症→凝固。エコーは圧迫して静脈が凹むか、ドップラーで流れがあるか確認。鼠径靭帯から10cm下までを確認、次に鼠径靭帯から10cmくらい上を確認→ありそうなら造影CT。慢性経過の場合は弁形成不全を疑う。
深部静脈血栓症以外のものは?
・圧痛・発赤・熱感強い→細菌感染:蜂巣炎、丹毒→塗抹・膿培養→溶連菌か黄ブ菌(免疫不全だと菌種多様)→1世代セファゾリン1gNS100ml8時間毎
※陰部など嫌気性菌が疑われる場合はバンコ+メロペン
この中でも特に注意すべきものとして

☆壊死性筋膜炎:局所の変化に対して痛みが異常に強い。進行が速い。皮膚が非常に浸潤である。この3徴には敏感になっておく。ショック、致死的、ヤバい。
→進行したら:皮膚の変色・水疱(紫、青銅色)、周囲皮膚の感覚脱出。握雪感。
※臨床早期に他の皮膚病変と鑑別するのは難しい。菌種の同定も難しい。血液・深部組織からのグラム染色、培養も感度は低い。混合感染も隠れているので広域抗菌薬は必須。
→切開して目視するのが確実。皮下組織、筋膜、筋肉を観察。
治療は早期のデブリ。抗菌薬も使うけど、抗菌薬だけでは治らない。デブリがまず何よりも重要な治療。経験豊富な外科医の助けが必要。
抗菌薬はクリンダマイシン(ダラシン)600-900mg+NS100ml8時間毎+バンコマイシン1g注射用水20mlに溶解→NS200ml希釈12時間毎。


外傷
外傷後のCRPS(complex regional pain syndrome)複合性局所疼痛症候群:先行する外傷や手術の後に、関係のない場所に、障害に不釣り合いな疼痛が出現。疼痛以外に感覚の過敏・低下、発汗の過剰・減少、皮膚の発赤・チアノーゼ、皮膚温度の上昇・低下、皮膚の浮腫・委縮・色素沈着、骨・筋委縮など多様。慢性化で関節拘縮。
症状説明できる別の疾患がない時にはこれを疑う。
治療はNSAIDs, オピオイドなどの疼痛管理や交感神経ブロックなど。正直よくわからん。

アレルギー性、薬剤性→NSAIDs、降圧薬(CCB, ACE-I)、精神病系(制吐剤も)、ステロイド、甘草、ホルモン薬

リンパ浮腫:だいたいはリンパ節郭清術後。20年前に手術したものでも起こりうるので、手術歴は丁寧に聞く。特徴は第2趾の皮膚がつまめないこと、蜂窩織炎を繰り返していること。悪性腫瘍の浸潤が原因だったりもするので癌関連の問診も。原発性は稀。

特殊な疾患
好酸球増多を伴う血管浮腫(non-episodic angioedema with eosinophilia)
→日本人、若年女性。原因不明。半数に関節痛、1/3に蕁麻疹などの皮疹を伴う。5%に浮腫も伴う(四肢末梢以外の浮腫)、関節炎、滑膜炎も生じうる。
少量のステロイドに良好に反応する。
繰り返すようなら、Gleich症候群ってのもあるらしい。IgM・IgE高値。しらん。
・POEMS症候群:しびれのところでもあった。poly(多発神経炎)とOrgan(臓器腫大)とEndo(内分泌異常)とM(M蛋白)とSkin(皮膚症状)のあれ。
浮腫ってビリビリしてる人には疑ってもいいかも。
・RS3PE症候群(remitting seronegative symmetrical synovitis with pitting edema)
→血清学的には異常ないけど、圧痕性浮腫ともなう対称性の滑膜炎
60歳以上で発症のRAっぽいけどRF陰性、でも炎症反応は上がってる。
・TAFRO症候群→全身性の炎症疾患、全身浮腫、臓器も浮腫。マニアック。

静脈うっ滞性浮腫
・静脈弁形成不全(30%で合併)とかで立ってると戻りにくい→寝ると戻る。
・左下肢だけのちょっとした浮腫:左総腸骨静脈が総腸骨動脈に圧迫されて浮腫る。もともと左の方がむくみやすい。 圧迫と動脈の拍動刺激で静脈が線維化、狭窄して血栓できやすくなるみたい。→May-Thurner症候群

そんなに病的でないやつ?
・妊婦(女性ホルモン):ただし、妊娠高血圧症は怖いので、高血圧・尿蛋白は確認する。
・特発性浮腫:ホルモンとかで血管透過性亢進→血管内脱水→RAA系亢進→水の維持→1日に体重1kg以上変動する。
RAAは2次性に更新しているので、利尿薬とか出したら余計に悪化することは覚えておく。
生活改善が大事?精査(水負荷、糖負荷、TRH負荷、体重記録など)は内分泌内科で。 

・血管性浮腫:非圧痕性浮腫
多くはクインケ浮腫:特発性、再発性。よくわからん。ほっときゃ治る。
遺伝性血管浮腫(HAE)C1インヒビター欠損。家族歴。精査いる?
・脂肪浮腫:女性、家族歴、大腿~足部までの浮腫。足部は浮腫を認めない。

・低Alb血症:血中のAlbが低く、血管と組織の間での水の移行性が亢進している。押したらその部分は血管に水が戻って組織がへこむ。でも、透過性が亢進しているのですぐにまた組織中に水が出る。1-2秒圧迫した後、2-3秒で浮腫が回復する。(1,2押して、3,4,5確認5秒で診断)→低Alb血症
戻らなかったら、少し面倒だけど、10秒押して40秒で戻るか確認。戻ったら低Alb。ただし、3カ月以上経過している低Albだと線維化をきたして圧痕が戻りにくくなっているので注意。戻らなかったら血管透過性亢進or他の機序の疾患を考える。

甲状腺は機能亢進・低下どっちでも、初期には浮腫をきたしうる。
・盲端症候群(blind loop 症候群):腸管切除後、盲端形成。ビルロートⅡ、vitB12欠乏
・蛋白漏出胃腸症:消化管粘膜障害+リンパ管内圧上昇→アルブミンが消化管へ漏出。
根本原因は色々。寄生虫のスクリーニング検査は大事。