骨の基本

骨の基本
※ウォルフの法則:骨組織には負荷がかかる部分に骨が形成され、負荷のかからない部分の骨は吸収される性質がある。
・血管:栄養血管→骨皮質→フォルクマン管→ハバース管→骨単位(オステオン)へ
・骨端軟骨:成長。
・関節軟骨:硝子軟骨。圧迫で変形する。血管はなく、滑液によって酸素と栄養供給
・関節唇:肩・股。不安定な部分でせり出して、関節面を広げ安定化。
・関節半月:膝。関節腔を不完全に二分する。内足と外側。接触面を広げ圧力を分散。
・関節円板:顎・胸鎖関節。完全に二分。関節面の適合性と可動性を高める。


骨折治癒過程
炎症期:受傷後数日
骨折、出血、壊死組織。サイトカイン産生されて諸々、線維芽細胞などが遊走して凝血塊を形成+未分化間葉系細胞、前骨芽細胞が増殖+骨膜で新生血管が増生
修復期:受傷後数日~数ヶ月
  骨折部の凝血塊の中に毛細血管が侵入+未分化間葉系細胞が軟骨細胞や骨芽細胞に分   化する。⇒凝血塊が肉芽組織となり器質化が進む。類骨が形成されてそこに骨塩g沈着して石灰化、仮骨を形成する。仮骨の初期は軟性仮骨(主に線維組織と少量の骨)で、そこに骨芽細胞が働きかけて石灰化が進み、線維性骨からなる硬性骨となる。徐々に堅くなるけど、強度は不安定、この時期に負荷をかけすぎると遷延癒合・偽関節。
モデリング期:数ヶ月~数年。破骨細胞による骨吸収と骨芽細胞による骨形成。
線維性骨がリモデリングにより層板骨へ置換される。⇒皮質骨、海綿骨へ。

治療の時期の判断<癒合期間>:年齢・部位・骨折・損傷の程度でバラバラ
⇒骨折局所の自発痛がなくなり、圧痛と異常可動性がなくなった時点で骨癒合完了。
圧痛あり:治療過程が進行中の骨折
異常可動性あり:未だ骨癒合が得られていない。
⇒個々の骨折の目安を把握して、経過観察していく。経験積む。
Xp:骨折線が消失し、皮質骨・海綿骨に連続性が認められた時点で骨癒合完了と判断
判断は難しい。

・関節
不動性の関節
・線維性結合:頭蓋骨の縫合や遠位脛腓関節(脛腓靭帯結合)
・軟骨結合:線維軟骨や硝子軟骨で構成。椎間板や恥骨結合、肋軟骨。
・骨結合:発生期の骨が癒合して単一の骨になったもの。寛骨(腸骨+恥骨+仙骨)、仙骨(5個の仙椎)

可動性の関節
・関節包で包まれる。関節包は外層は密な結合組織で丈夫。内層は血管に富む特殊な結合組織の膜で、滑液を分泌し滑膜と呼ばれる。
形状:多軸性の球関節(肩・股)、二軸性の楕円関節(橈骨手根関節、顎)、鞍関節(母指の手根中手関節、胸鎖関節)、一軸性の蝶番関節(腕尺関節、指節間関節)、車軸関節(橈尺関節、正中環軸関節)、平面関節(椎間関節、足根中足関節)

筋繊維
・Ⅰ型線維:ミトコンドリアを豊富に持ち、筋原線維に乏しい。多いのは赤筋、持久力。
・ⅡB型線維:ミトコンドリアが少なく、筋原線維が密に配列。多いのは白筋、高速。

腱:筋付着部では、その線維が広がって骨膜に移行(骨膜の中に線維層ができている)し、シャーピー(Sharpey)線維と呼ばれる強靭な線維が骨に入り込んでいる。筋と腱の移行部では、腱のコラーゲンが筋線維の間に入り込んで結合している。

神経
中枢神経
皮質脊髄路(錐体路):全角細胞のうち、遠位筋の外側運動ニューロンを支配する。
錐体外路系(色々):体幹筋、近位筋を支配。腹内側運動ニューロン支配。脊髄の前根。
・感覚神経:後根
・温痛覚:脊髄視床路。
・触覚・振動覚・後索、内側毛体系。

神経線維:軸索→神経線維鞘→髄鞘→鞘
損傷は芯(軸索)がこわれるのは軸索変性、鞘(髄鞘)がこわれるのは脱髄


疼痛
。侵害受容性疼痛:外傷、感染、腫瘍などに起因する組織の炎症過程で発生するヒスタミン、プロスタグランジン、ブランジキニンなどのメディエーターにより、痛覚受容体が興奮し感じられる疼痛。NSAID
神経因性疼痛:組織の炎症ないにもかかわらず、神経が興奮し疼痛自覚。幻肢痛、複合性局所疼痛症候群など。抗てんかん薬、ステロイド、試しに。
心因性疼痛:向精神病薬など使う。

評価の基本(外傷);MIST
Mechanism:受傷機転
Injuary:実際の創部
Sign:バイタル、その他症状
Treatment:実際に行った処置

診察の基本
理学所見は必ず左右を比較する。健側から患側へ、疼痛がない部位から疼痛部位へ。疼痛が生じない手技から疼痛が生じる手技へと進めていく。

☆脂肪塞栓症候群の診断所見
大:点状出血、呼吸器症状と胸部Xp(吹雪様)、脳神経症状(頭部外傷除く)
中:低酸素血症(PaO2≦70mmHg)、ヘモグロビン低下(<10g/dL)
小:頻脈、発熱、尿中脂肪滴、血小板減少、赤沈亢進、血清リパーゼ上昇、血中遊離脂肪滴
で、大基準2項目以上か、大基準1項目+中小基準計4項目か。
検査は問診、バイタル、胸部Xp、酸素化、血算、赤沈、リパーゼ、尿検査、血中遊離脂肪
※点状出血は眼瞼や口腔粘膜に多い。上半身の頸部や腋窩部にも多い。脳神経症状は軽度の混迷から痙攣まで多彩。
基準に含まれてないけど、網膜所見もある。Purtscher's retinopathy=白斑っぽい?DICや閉塞性ショックも起こしうる。
→疑ったら、脳MRI<T2で高信号、T1で低信号、拡散強調(TWI)は早期に >
肺病変は造影CT,でも脂肪塞栓症の肺病変で胸部造影CTに異常を認めることは稀。造影CTは肺塞栓症(血栓)の診断には有用だけど、血栓がなさそうといって、脂肪塞栓がないことにはならない→稀だけど、所見は浸潤影、すりガラス影、結節影
ステロイドの使用は重症例でのみ、1~5日間くらいの短期間でメチルプレドニゾロンを1~1.5mg/kg/日程度を使用。(50kgなら50~75mg/日くらい)

☆コンパートメント症候群の診断
・通常の鎮痛剤で改善されない激しい疼痛
・損傷部全体の腫脹
・ストレッチテスト<筋肉を引き延ばすような受動運動で増強する疼痛>
・コンパートメント内の神経支配に一致する知覚異常・運動障害
→疑ったらコンパートメント内の内圧測定して40mmHg以上なら治療へ
→筋膜切開。


☆痛み止め:3種類<侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛、非器質性疼痛>
①急性→侵害受容性疼痛
NSAIDs、アセトアミノフェン:1,2週間は定期→頓服に切り替え
PPI(ネキシウム20mg1T朝とか)を併用する。
・疼痛強度で:軽、中等度→ロキソニン60mg3T3x。強度→ボルタレン25mg3T3x
アセトアミノフェンは200mg6T3xとか?1回1000㎎まで(成人は)増量可。小児は容量がめんどくさいので都度確認。

②慢性痛で障害受容性疼痛の時
アセトアミノフェンやCOX-2選択的(セレコックス200mg2T2x朝夕)
ダメならオピオイド(トラムセット50mg1T1x眠前、漸増。ノルスパンテープ5mg前胸部あたりに貼付、7日ごとに張り替え)

③慢性痛で神経障害性疼痛の時
リリカ25㎎1T1x眠前、漸増可。SNRI(サインバルタ20mg1cap1x眠前)

三叉神経痛だけカルバマゼピンが第一選択

他に
筋弛緩薬(筋緊張強い時に)→ミオナール50mg3T3x
よくわからんけど慢性痛になんでか効く→ノイロトロピン4単位を4T2x朝夕。安全○


☆チネル徴候
神経線維再生の過程において、まだ髄鞘に被覆されない軸索の先端部は機械的刺激に対して過敏になる。四肢の表在近くに触れる神経幹内に再生が始まると、皮膚表面を軽く打っても放散性の非常に激しい痛みが発生する。これが時間の経過とともに末梢へ移行する現象をチネル徴候と呼ぶ。知覚線維は筋線維の伸張反射受容器 stretch receptor を支配し、通常は痛みとは別の知覚を司るが、脱神経後の筋肉内に知覚神経線維が再生する際には深部疼痛 deep pain を発生させる。この疼痛発生時期は、筋肉に運動終末が再形成されて再び収縮が認められるようになる時期に先行するため、筋肉の圧迫痛が強い場合には神経再生の徴候と認められる。軸策の再生が順調に経過する場合、当初は受傷部に強く現れる陽性徴候が次第に弱まって末梢へ移るため、再生速度を知る目安になる。

Tinel徴候ってのは、特定部位(正中神経とか腕神経叢とか)の叩いて痛みが出るってやつではなくて、通常は痛みとは関係ない知覚神経(伸展反射受容器)が脱髄(壊れて)して再生する時に、伸ばした時とか(叩いた時とか)に痛み(放散痛)が出てくる。
で、再生の最初のころは痛みが強いけど、軸索の再生が順調だとその痛みが次第に弱まって末梢に移る。このトータルの減少をTinel徴候という。
だから、これは障害も指すけど、治癒・再生が順調にできてるかも確認できる大事な奴。

 


胸郭出口症候群
腕神経叢と鎖骨下動脈、鎖骨下静脈が胸郭出口付近で頚肋、鎖骨、第一肋骨などや前斜角筋、中斜角筋、小胸筋などに圧迫・牽引されることで起きる症状の総称である。

・神経型:アドソンテスト陽性、ルーステスト陽性、チネル徴候陽性 90%以上で鎖骨上と前胸壁に灼熱痛を感じたり、尺骨神経領域に局所痛と感覚異常が出る。鎖骨の圧痛、腕神経叢引っ張りテスト陽性。手の内在筋衰弱、母指球筋または小指球筋のしびれ、むちうち症の病歴、キーボード・ファイリング(反復的上肢運動)、持ち上げ作業(頭上挙上運動)の病歴がある患者に多い。

・静脈型:第一肋骨、前斜角筋、鎖骨、肋烏口靱帯による鎖骨下動脈外部圧迫が伴われる。上肢反復運動、鎖骨骨折の病歴があり、局所の静脈造影が必要となる。

・動脈型:ワイリーアレンテスト陽性 前斜角筋、中斜角筋間の鎖骨下動脈の圧迫が伴われる。鎖骨下動脈瘤を引き起こすことが多く、アテローム塞栓による指の虚血が伴われる。


骨粗鬆症
注意したい疾患は椎体圧迫骨折(海綿骨が低下)と大腿骨頸部骨折(皮質が低下)
リスク:FRAXの分類(保留)
検査:骨密度、骨代謝マーカー<BAP, P1NP, TRACP-5b>
BAP:骨型アルカリフォスファターゼ。骨代謝マーカー。リモデリングを抑制するビスホスの薬の治療効果判定に。ベースと6カ月後とか。採血はいつでもOK。60%に低下させたい
P1NP(I型プロコラーゲン-N-プロペプチド):骨形成マーカー。PTH製剤(フォルテオ)の治療モニタリングに
TRACP-5b(骨型酒石酸抵抗性酸性フォスファターゼ):破骨細胞にのみ存在する酵素で、骨吸収の亢進に伴って血中に漏出する。骨吸収マーカー。

 


☆内服薬
モデリングを促進
 rhPTH:テリパラチド(=フォルテオ、1日1回皮下注、24カ月まで)、

モデリングを調整
 SERM:選択的エストロゲン受容体調整薬。エビスタ(ラロキシフェン)、ビビアント(バゼトキシフェン)
 vitD:エディロール、アルファロール、アルファカルシドール、ワンアルファ
 vitK:グラケー、ケイツー、ケーワン、vitK2のメナテトレノン

モデリング(骨吸収)を抑制:骨密度は上がる。質は悪いかも
ビスホスホネート:ボナロン、ボンビバ、リカルボン
抗RANKL抗体:骨吸収を止める。老朽化した骨はそのまま

他には高脂血症だと骨粗鬆症促進するのでスタチン(vitE追加で効果上昇)。


eGFR<60ml/分では血清PTHの上昇、血清1,25水酸化vitD3欠乏が著明になってくる。また、腎機能の低下に伴い、血中へのCa, Pの排泄が低下していくじとにも注意。