創傷処置

創傷処置
創=開放創。創傷処置は縫合。創傷処理は洗浄・消毒
⓪横になってもらって詳しく診察・処置:迷走神経反射などで倒れたらいかんので
・受傷機転:典型例などからの創の推測。処置を行いながら。創の周囲も調べる。
・いつ(6,8時間以内か)、どこで(室内or屋外、汚染)、誰が(自傷か他傷か)、どんな感じで(受傷機転:超大事)、どうして(外的因子or内因性因子)
①創の観察:場所と深さ+性状【切創、刺創、挫創・割創、咬傷】
二次感染を防ぐために多めの滅菌ガーゼと包帯で被覆。デジカメで撮影。何度も見ない。
活動性出血があったら、出血点をピンポイントでやさしく押さえる。強くしない。
大事なのは出血点を確認して、創部挙上して、ガーゼの上からじっと押さえる。
※出血が止まらない時はクランプ必要だけど、必ず展開して目視下に止血する。
・切創:カッター、鋭い。汚染がなければ洗浄のみで縫合可能。
・刺創:ナイフ、深い。奥が見えない。血管・神経の軟部組織の評価が大事。
・挫創・割創:皮膚・皮下組織の挫滅を伴う。感染怖い。デブリが大事。
・咬傷:犬・猫・人。創周囲の発赤・腫脹。高率に感染。十分デブリ
分類
・刃物で刺す→刺創(鈍いやつで刺されてたら杭創)。切る→切創(斜めなら弁状創)。鈍い切り口→割創。
・挫創:圧挫による開放性損傷。皮膚損傷ない時は挫傷で、皮膚損傷が高度なら挫滅創。
・裂創は引っ張られて裂けた場合。
※深さ;筋膜の損傷→筋膜縫合。皮下・筋層の損傷による創内血腫に注意→深い縫合はマットレス縫合で。
②軟部組織損傷の評価
・主要動脈の損傷(末梢側の脈拍の触知、毛細血管再充満時間:2sec以上で異常)
・神経損傷:知覚の確認。
・運動障害:筋・腱確認。これは術前の状態として陰性所見も必ずカルテに記載する。関節包の損傷の評価も大事。
③異物・骨折の評価
・異物確認のためにx線。ガラスは写るが、木片は写らないので注意。
・骨折あったら、開放骨折の治療に準じる。創の上下1関節は診察するよう努める。
④輸液・抗菌薬:セファゾリン3日。汚染高度でGNRも含めるならゲンタマイシンorアミカシンも追加
⑤麻酔・手術の準備:汚染が高度な場合は全麻での処置もありうる。6時間の時間に注意
開放骨折のGustilo分類:Ⅰ→1cm以下で汚染なし、Ⅱ→1cm以上だけど広範囲の拍悲壮なし、Ⅲa→広範囲の剥皮創あるけど、被覆可能。高エネルギー外傷。Ⅲb→骨膜剥離や骨露出を伴う。高度汚染あり。Ⅲc→修復を必要とする動脈損傷あり。
☆処置:仰臥位で。
①麻酔:表皮消毒後、局所麻酔。キシロカイン1%(極量は40㎎、40ml程度)痛みに応じて。
※汚染が少ないなら皮下(傷口)から、汚染が高度なら表皮から。
②洗浄・ブラッシング:水道水、生食で大丈夫。大量(汚染創なら2L、開放骨折でⅠ型は3L、Ⅱ型は6L、Ⅲ型は9L)に使って強めの水圧で流す。頭髪はカットできる。眉毛は生えてこないからカットできない。流しきれないものは直視下で鉗子を用いて除去し、滅菌された軟らかい歯ブラシなどで愛護的にブラッシングする。
消毒液は創内に入れない。「眼に入れないのは創にも入れない」の原則。
③挫滅・汚染組織のデブリ:目的は壊死組織を切除して、正常組織同士がくっつくようにすること。切除ラインで血流が十分にあることを・正常組織が露出していることを確認する。顔・手のデブリは最小限、他はしっかり。だけど、個々の症例で血行変わるので経験
デブリに際しては、創の清浄化のために施行すること、創が大きくなること、デブリをしても感染や壊死の可能性がゼロでないことを説明する。メスで鋭的に切除。
④縫合:縫合糸は創底部まで通し、死腔の形成を避ける。死腔は血腫・感染のリスク。だいたいナイロン糸を使う。ナイロンは炎症反応少ないし、モノフィラメント(ブレイド、編み糸は繊維と線維の間に最近が入り込む)。通常は4-0ナイロン、4-0PDS。
※顔面は5-0の細いナイロン。整容的に、きつく縛るマットレス縫合は痕が残りやすいので禁忌。抜歯は早めの3-5日。眼や口唇などの繊細なところは当日はステリで傷を寄せるだけにして、後日形成受診するのが良さそう。
※頭皮は基本ステイプラー。高頭部だと寝るとき痛いので控える。
縫合の原則は①死腔を作らない。②皮膚の各層(表皮、真皮、皮下組織)をきちんと合わせる。③表皮を盛り上げるように(外反させる)する。内反はダメ絶対。④縫合はきつく締めつけ過ぎない。あくまで接合。
刺入の距離の目安:刺入点から創までの距離=縫合と縫合の距離。
フォロー:翌日に創感染のチェック。発赤・疼痛・排膿あれば抜糸し、再デブリ。縫合をやり直す。抜糸は顔面なら3-5 日後、その他は7日、関節面なら(血流少ないので)10-14日。
※創は基本的に48時間で上皮化するのでその後の消毒処置は不要。
※包交は創の観察を目的としていることを忘れない。

縫合テクニックは…

※外傷で軟部組織損傷強かったりして縫合するようでもない挫滅創には
☆カルトスタット≒ソーブサン
これは体液等を吸収し、粘液様のゲル状に変化する性状を持つ。このゲルが創面に湿潤環境を形成し、組織の新生を助け治癒を促進する。また、本品は止血作用を促進する。本品の 上からガーゼ、フィルムドレッシング等を当てて固定使用する。とのこと。便利

他にはビジダーム(デュオアクティブ)→褥瘡や各種皮膚潰瘍に。これ自体に粘着力あり。浸出液の吸収はしないので、浸出液が多い創には不向き。時間経過で臭くなるので、そこが交換時期

※潰瘍は


動物咬傷
ヘビ:視診で創部の腫脹と易出血性を確認して、あれば毒蛇咬傷。圧迫されていたらすぐに解除(圧迫・吸引による排毒は受傷後30分までしか効果がないらしい)。まずは点滴ライン確保して、血算・生化・凝固。尿量モニターもする。創部洗浄して、腫脹のGrade確認。で、セファランチン注10mg, 破傷風トキソイド1A 筋注、抗生剤iv(1セフェ) 。6時間経過観察して(腫脹進行程度を確認するために創周囲径は測っておく)、GradeⅢ以上で抗毒素血清の適応。適応の範囲は広めでも大丈夫かも。血清投与前にアドレナリン0.3mg皮下注してから。アレルギーを超起こしやすいため。1バイアル投与で様子見。2本のラインと気道確保、アドレナリン筋注の準備もしておく)。受傷後30分経過後は緊縛・切開(乱切)・吸引の効果はないという報告が多いらしい。
※切開の目的は高度腫脹⇒末梢循環・神経障害を防ぐ減張切開(コンパートメント症候群治療的な)の意味合いが強い。6時間以内に有効。知覚・運動・末梢循環障害が出現した場合に施行する。入院が必要。
あと、毒で血管透過性上昇⇒volume lossで腎前性腎不全になりうるので1500~2000ml程度の外液の輸液を行う。
※抗毒素血清は原則1生に1回。皮内反応で強陽性なら投与しない。 
大事なのは腎不全を防げるか否か。予後規定。

Grade 分類
 Grade Ⅰ  咬まれた局所の腫脹
Grade Ⅱ  手関節、足関節までの腫脹
Grade Ⅲ  肘・膝関節までの腫脹
Grade Ⅳ  1肢全体に及ぶ腫脹
Grade Ⅴ  体幹に及ぶ腫脹・全身症状を伴うもの

※ヤマカガシは牙痕はアオダイショウみたいに地味だけど、毒性はマムシの3倍。潜伏期数時間~10数時間後に遅発性の局所から広がる出血、凝固異常を認めたらヤマカガシ咬傷を疑う。地味な牙痕だから大丈夫というわけではない、症状出現時に再来することを必ず患者に伝えるようにする。


カルテ
・年齢、性別→何時、こんな受傷機転で受傷。内因性因子、既往・内服薬。
・創は何cmx何cmの何創を認め、軟部組織の脂肪や皮膚の剥奪の有無、血行動態を認める。神経損傷、腱損傷、関節包損傷、骨折の有無。
・処置は生食何Lで洗浄し、異物の有無。(4-0何とか縫合糸で何針皮下縫合、深い時)、4-0ナイロンで何針短針結節縫合した。
破傷風トキソイド(高度汚染の時、適応曖昧)を筋注し、皮膚壊死に注意しながら外来フォローとする。患者、その家族に、異物残存の可能性、創治癒不良、感染のリスクを説明した。