抗菌薬の選択と分量
下痢はアレルギーでなく腸内細菌叢の変化による。容量依存の毒性はアミノグリコシド
治療期間の研究は少ない。科学性に乏しい。あくまで目安程度に
ユナシンは嫌気性菌に広くて、ロセフィンはGNRの方に広い。
腎機能の確認は大事

・細菌性咽頭炎(咽頭炎の10%溶連菌,他はだいたいウイルス性)
修正Center基準:発熱(38℃以上)、咳なし、前頸部リンパ節腫脹・圧痛、扁桃白苔、3~14歳(45歳以上は-1点) 2点以上で溶連菌迅速検査<A群β溶血性連鎖球菌:GAS>
陽性→GASに対して、アモキシシリン(500)1T1日1回10日間(リウマチ熱合併防止に)
※実際、伝染性単核球症かもしれないから、ペニシリン系はあまり使いたくない。でもセフェム系は広域過ぎる。外来commonなやつに毎回GNRカバーしたくない→AMPCを
実際はLVFXが多く使われている印象。
あと、伝染性単核球症(EBV, CMV, HIV)の特徴の頸部(耳下腺、後頸部)リンパ節腫脹、肝脾腫、頭痛、腹痛、筋肉痛、眼瞼浮腫、ALT上昇、PLT低下などあったらLVFX使用。


・急性副鼻腔炎:鼻づまり、鼻炎、前傾で疼痛増強。
基本は対称療法でカロナール3T3x, ブリビナ点鼻薬(≦3日)、漢方も可
重症例・難治例にアモキシシリン(500)1T1日3回10日間。アレならバクタかLVFXか

・急性中耳炎:肺炎球菌、インフル桿菌→アモキシシリン(500)1T1日3回5日間
☆状態良ければ抗菌薬なしというオプションもあることを知っておく。
ただし、重症例、長引く例(10日以上)には抗菌薬使う。そのときはオーグメンチン。

・市中肺炎:6大起因菌はおいとく。
起因菌で投与期間は大きく変わる。肺炎球菌(レジオネラも同じくらい)なら最低5日かつ解熱後3~5日間、だいたい1週間?。非定型肺炎も1週間。緑膿菌ブドウ球菌なら3週間(安定化するまで)。
軽症っぽい:オグサワ(誤嚥もカバーできるのでお得):オグ1Tサワ2Tを1日2回。
重症っぽい:ロセフィン1g2回+アジスロマイシン(ジスロマック)500㎎1回(2時間で)
<バンコマイシン1.5g+30g注射用水→NS300ml→60分で点滴>12時間毎
緑膿菌リスクある肺炎:タゾピペ(4.5g,8h)、セフェピム(2g,8h)、メロペネム(1g,8h
→長期ステロイド、重症COPD、アル中、既往に抗菌薬使用、老健施設、長期入院も
・人工呼吸器関連:緑膿菌→3つのアレ
レジオネラの全身倦怠感、頭痛、食欲不振、筋肉痛、咳や38℃以上の高熱、寒気、胸痛、呼吸困難があったら、LVFX500入れること。
あと、周囲でマイコの感染あってもLVFX。

尿路感染(大腸菌>腸球菌>>腐生ブドウ球菌)
※膀胱炎
・単純性:セファゾリン(静注)1-2gを8時間おきか、ケフレックス250mgを1日4回。
・複雑性:尿路に前立腺肥大症・癌、神経因性膀胱、膀胱癌、膀胱下垂・瘤などの基礎疾患があるときもセファゾリンあたりでたぶん大丈夫。一般にST合剤やキノロン(シプロキサシン200㎎1日2回)の方がイイっぽいけど、耐性菌多いし、妊婦に使えないし(ここ重要)で結局膀胱炎程度なら尿で流して治っておしまいも多いのであまり気にしすぎない。

腎盂腎炎<膀胱症状+発熱、悪寒戦慄、側腹部痛、腰痛、悪心、嘔吐など>
敗血症が特に怖い。2週間治療する。
単純性:軽ければ…、ST合剤やシプロキサシンって書いてあるけど、妊婦は×。CTRX?
複雑性:水腎症、尿路結石症、膀胱尿管逆流現象、神経因性膀胱、腎盂尿管癌などの基礎疾患があるとき、起因菌はエンテロコッカスや緑膿菌の率がすごい高くなる。ので、グラム陰性菌を中心に強力に治療する必要がある。→広めにCTRX
重症感強い→ゲンタマイシン(5-6㎎/kg→300㎎/50㎏+NS100mlで1時間かけて持続静注)とかアミカシンとか
☆抗菌薬が適切であったとしても2,3日は解熱しないことも多い。だから、焦って抗菌薬をやたらと変更しない。その代わりに、実質膿瘍や腎周囲膿瘍など抗菌薬が到達できない病変がないか調べる。エコーが便利。


細かい話。第一世代のセフェムには二つ、セファクロル(ケフラール)とセファレックス(ケフレックス)の2つがあるんだけど、セファレックスは黄ブ菌により強い活性があって、セファクロルは連鎖球菌とGNRに広めの活性があるみたい。
ただ、大腸菌にはどっちも活性ありそうだし、CEXで大丈夫そう。
あと、第1世代セフェムは腸球菌に活性がないけど、ST合剤も活性はないので、ST合剤にはあんまりこだわらなくていいかも。耐性も多そうだし。
腸球菌ならアンピシリンにチェンジ。VRE(バンコ耐性の腸球菌)は最悪。感受性あればアンピシリン。なkればリネゾリド(ザイボックス)、ダプトマイシンで治療。


腹部感染:
「胆嚢炎は画像で診断し、胆管炎は血液検査で診断する」
「胆嚢炎は外科を呼ぶ病気、胆管炎は消化器内科を呼ぶ病気」
抗菌薬はどっちもユナシン(絶食のため点滴)でオッケー。なによりも閉塞の解除が大切。
ユナシン3g6時間おきで1日12g大量投与。スルペラゾンは量(1g中500㎎)が少ないし、メロペンは胆汁移行性が悪い。

前立腺炎(大腸菌性感染症)性感染→尿検査の他に淋菌・クラミジアの遺伝子検査も
軽症:性感染ならセフトリアキソン、細菌性ならST合剤2錠2回1日4錠10日間
重症:ユナシン 3g4回1日12g
効かなそうでも少し粘る。抗菌薬をコロコロ変えない。

化膿性関節炎:重症。診断は関節穿刺。培養もグラム染色も提出する。

エンピリックにはGPCならバンコマイシン。GNRならゾシンやメロペン。淋菌はCTRX
抗菌薬も大事だが、ドレナージももっと大事。
RAや関節炎、痛風などで壊れたところに感染しやすい。
・化膿性滑液包炎:関節炎っぽいけど、他覚的可動域制限はなし。そんな時に疑う。予後は良く、治療はセファゾリンあたり。
・腱滑膜炎:伸側か屈側。撓側か尺側。どちらか一方だけに蜂窩織炎っぽいのを見つけたら疑う。前腕の掌側だけとか。外傷、咬傷でもありがち。腱は感染・波及しやすい。
治療はユナシン(嫌気性菌もカバー)が多い。起因菌によって様々に変更しうる。

骨髄炎:急性or慢性。診断はMRI。培養も。長期戦。確定診断は必ずつける。適当にやってて結核性脊椎炎でした、っていう結果は割と最悪。心内膜炎の見落としも無いように。
急性:治療は通常4~6週間。エンピリックにセファゾリン入れて、培養の結果次第でescalation(むしろ広げる方)していく。狭い範囲の抗菌薬から広げるのは骨髄炎くらい?けっこう珍しい。
慢性:腐骨を形成して血流がなくなり、抗菌薬が届かなくなった状況。外科的なデブリが必要。

糖尿病足感染:破損だけなのか、感染が起きているのか。全身の炎症所見。MRIで骨髄炎の有無の確認も大事。こちらも狭くから広く。セファゾリンから。ただし、嫌気性菌のくっさい臭いがあったら、ユナシンとかから開始。

壊死性筋膜炎:基本メロペン2g8h+バンコ1g12h+クリンダマイシン(ダラシン)900mg8h
初期の皮膚病変が微妙な段階で見つけるのが大事。
具体的には、「筋膜」だけが侵されていて、皮膚病変は微妙なのに死ぬほど痛い。で全身状態もとても悪い。冷や汗ダラダラ頻呼吸。こんなイメージで行く。
ドロドロのどす黒いイメージは捨てる。
真っ先にやるのは救急・外科の専門医コールして、筋膜切開施行すること。血培・患部培養もさっさと取っておく。

人工関節炎:培養とってセファゾリン2g8h。でescalation。治療期間は4~6週間。

感染性心内膜炎:熱だけとか、曖昧な症状の時に見つけられたら良い。そのために発熱の鑑別にはいつもちょこっと入れておく。

感染性動脈瘤:レア。ロセフィン+バンコ

咳と鼻水:細菌なら抗菌薬、ウイルスなら抗菌薬使わない。ではないに変わっている。
細菌感染でも患者の不利益のほうが大きかったら抗菌薬は使わない方向に行ってる。
・慢性咳嗽:だいたい抗菌薬では治らない。百日咳も抗菌薬の治療効果があるのは発症2週間以内。以降はかってに治る。
使うのは副鼻腔炎くらい。適当に抗菌薬をあっちやって、こっちやって、ってしてると結核だったってことにもなりかねないので、ルーチンで抗菌薬の処方はしない。

・急性喉頭外炎:抗菌薬よりも検査よりも何よりもまずは専門医コンサルト。さっさと切開排膿ドレナージ。抗菌薬はCTRXあたり。

妊婦と抗菌薬:参考程度
回避すべきは:テトラサイクリン、ニューキノロン、ST合剤も。生ものの摂取も禁。

子宮内膜炎:腹腔内→ユナシン(嫌気性もカバー)かせフメタ

結核:過去の結核は現在の結核を否定しない。大事。
検査は(結核の既往がなければ)T-spot(やIGRA)。で、疑ったらすぐ隔離して3連痰(3日連続で朝の痰塗抹検査)。全部陰性なら感染性なしと判断する。
同時にHIVの検査も行う。なぜ結核発症したかの原因検索も。

髄膜炎:ロセフィン+バンコ
脳膿瘍:脳膿瘍と感染性心内膜炎はセット。片方見つけたら、もう一方も疑う。
治療はドレナージと抗菌薬(色々ある)、長期。

皮膚軟部組織感染症:小規模のSSIなら切開排膿だけで十分。ケフラックスやオグサワを使うのが基本。GPRがメインの感染。
うっ滞性皮膚炎と間違えないようにする。全身状態が良い慢性の経過。患肢挙上が大切。

熱傷・外傷
予防投与で推奨されているのは、開放骨折セファレキシン、動物咬傷にオグサワ。微妙なラインのところ。

創部感染症(surgical site infection):SSI
起因菌:黄ブ菌>コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)>腸球菌>緑膿菌大腸菌、エンテロバクター、プロテウスなど
浅部と深部の2分類。評価も治療も治療期間も程度問題。軽度そうか、深刻そうか。

・浅部
深刻そう→MRSAもカバーするバンコ1g12時間毎。ショックならゾシンやメロペンも加える。
軽そう→セファゾリンやユナシンで大丈夫。

・深部→深部っぽいという外科医の直観が重視される。経験大事。
各論的な話になる。デブリだったり、外科的な処置が必要なこともある。


※カテ感染=菌血症
カテ先培養はあんまり意味ない。血流にのってない、カテ内に集まった菌が検出される。
原因菌で大事なのは耐性ブドウ球菌バンコマイシン1g12時間毎。
でも、超重症ならバンコ1g12h+メロペン1g8h+ミカファンギン150mg1日(カンジダに)
大事なのは治療の前に予防。さっさとラインは抜く。手指消毒は徹底する。

術後院内肺炎(HAP/VAP)
まずは、菌が原因かそうでないか。
「露骨に」むせて誤嚥→化学性肺臓炎
マジモンの誤嚥性肺炎:露骨な誤嚥はむしろない。口腔内の菌がちょろちょろと下気道に落ちて行って感染成立するやつ。院内だと口腔内のグラム陰性桿菌(だいたい耐性菌になってる)が起因菌になってたりする。→術後の誤嚥性肺炎は嫌気性菌もGNRも耐性菌もまとめてカバーするイメージでゾシンなどの広域薬が使われる。
治療期間は原則7日間。MRSA緑膿菌などなら14日間。

肺炎か心不全かARDS(急性呼吸窮迫症候群)か
・肺炎と心不全の鑑別は喀痰の性状「膿性」か「シャバシャバ」か
・肺炎として治療していて、血圧・脈拍・バイタル。血液検査など改善していってるのに、呼吸状態だけが悪いまま。→だいたいARDSを合併している。
治療に対して呼吸状態だけ応じてくれない、この「噛み合わなさ」でARDSを疑う。
おまけ:肺野に陰影の出ない突然発症の低酸素血症→肺塞栓多い。

※術後院内感染での尿路感染:起因菌は基本一つ、でだいたい大腸菌。嫌気性菌のカバーはいらない。でも敗血症になったらヤバい
→エンピリックにセフェピムで培養出たら(大腸菌なら)セファゾリンでよい。

※術後下痢:CDIの偽膜性腸炎。診断はCDトキシン。便培は不要。
治療はメトロニダゾール。250㎎1日4回。or500mg1日3回を10~14日。だめならバンコ125mg1日4回10日間

動物・人咬傷でもユナシン