意識消失発作:特に一過性意識消失発作。その中でも失神(脳血流低下)
鑑別しても40%は原因不明。60%のうち、7,8割は病歴と所見で診断可能。病歴と所見で診断できるのは全体の半分くらい。分からなくてもあまり気にしない。
意識消失:原因不明なことは結構多いので、リスクを評価して帰せるかが大事。
最多は迷走神経反射。致死的なのは心疾患。心疾患由来のてんかんは見落としがち。TIAによる失神はなさげ。脳底動脈、両側頸動脈狭窄による失神は神経症状を伴う。
・リスク評価
☆OESIL
65歳以上。心血管疾患の既往。前駆症状なし。心電図異常あり→2点以上で入院
☆SFSR(サンフランシスコ失神ルール).CHESS
C(Congestive)心不全の既往。H(Hematocrit)Ht<30%。E(ECG)心電図異常。
S(Shortness of breath)呼吸困難の既往。S(systricBP)sBP<90mmHg→1点以上で入院
※信用しすぎないことが大事。超信頼できる判断基準は確立されていない。
だから、危険なやつから除外していくという態度が大事になってくる。

順番(心電図、血糖値は全例測定、他の検査は微妙。問診が重要になってくる!)
・そもそも本当に失神か→失神を「めまい」「立ちくらみ」と表現する人は結構いる。話しを聞いて確認。失神→転倒なのか、転倒→外傷→失神なのか、まず頭を診察し確認。
・失神かけいれんか。アプローチが全く異なる。けいれんならけいれん対応。
・バイタル、身体所見で心原性、(脳)血管原性、起立性低血圧、薬剤性、神経調節性の見当をつける。所見に関係なく心電図は全例とる。
以下5つの鑑別のためにそれぞれの精査・治療施行。

②失神orけいれん(てんかんに伴う痙攣や脳腫瘍による痙攣、他色々で脳の異常電気活動が起こって、筋肉がビクビクなる。)
まずは定義。けいれんには2つの意味がある。
①筋肉の不随意運動だけを示すconvulsion
②大脳の異常な電気活動を示すseizure(てんかんだったり、頭蓋内の炎症・出血・腫瘍・代謝などなんでもあり)
ここでのけいれんは②の意味のけいれんで、大脳の異常電気活動を指す。ただ、大脳がバチバチした結果、筋肉がビクビクなる(てんかんのけいれん発作、seizureによるconvulsion)ことは当然ある。混乱しがちになるので言葉の定義はしっかりする。
結局、脳がバチバチなって意識消失したか、血が行かなくなってストンと意識が落ちたのかを鑑別しようということ。けいれんも脳虚血も一緒に幅広く検査しようとすると、検査の数が増えすぎるので、まずはけいれんっぽいかどうかを問診と診察で判断するのが大事!原因は頭の中か、頭の外か!

けいれんらしさってなにか?
特に誘因なく突然前駆症状(振戦、無心没頭、幻覚、既視感、気分変化)が出現し、いきなりけいれんが出現。怒責で顔真っ赤、眼を開いて舌側縁に舌咬傷。異常体位で頸部回旋、頻脈、尿失禁あり。1~2分間意識消失。ゆっくり意識回復してあとには昏迷状態。健忘あり。
けいれん発作持続→まずはABC安定化。(酸素orバッグ換気)と血糖測定。
で、BZジアゼパム(セルシンホリゾン)を10mg/2ml→1A筋注。ルートある場合は1/2A静注。5分毎、2回まで。
※意外にジアゼパム注腸は効果発現が(筋注より)早くオススメ。筋注は遅め。
→遷延するならフェニトイン(アレビアチン・ヒダントール)500mg+NS100ml点滴
→それでもだめなら全身麻酔(イソゾール0.5g/A+NS20ml→ゆっくり静注)
・けいれん収まったor最初から認めない場合。鑑別スタート
けいれんっぽい→まず血測定して低血糖によるけいれんを除外。栄養障害疑いならvitB1
低血糖否定後→真性てんかん、症候性てんかんの鑑別→真性は脳波でのみ診断できる。
※実際は中々その場で脳波をとるのは難しい→症候性てんかんを除外できたら後日精査。
・症候性てんかんの鑑別
頭蓋内病変(血管、外傷、腫瘍、感染)か、薬物(酒含む)の過量・離脱、代謝性疾患か
鑑別は基本検査。+薬歴も(精神科系の薬)
代謝性:血液→+で凝固、アンモニア、乳酸。プロラクチン、Mg、血ガスも。
頭蓋内病変:頭部CT。可能ならMRI撮影できれば頭蓋内病変の確認精度が上がる。
感染疑いで血培、胸部xp。
※全例MRIは厳しいので、発熱を伴う重積発作例、脳炎、超緊急脳梗塞例などで撮影?
脳炎髄膜炎疑いなら、腰椎穿刺も必要…。
でなんか変な発作。心電図にもっと注意する。基礎疾患のQT延長やブルガダなど。
※実際はけいれんが来たら、けいれんを止めて致死的な疾患を除外できれば、あとの精査は後日でも十分だったりする。

☆まぎらわしいやつ
心因性けいれん(転換性障害)、ヒステリーともいう。
ガクガク・ブルブルしているけど、意識あるし、記憶もある、指示に従う。でも詐病というわけではない。本人の意思でやっているわけではなく、困惑していることには注意。
逆に
・けいれんしてないけどてんかん発作
原因不明の一過性意識障害、失神っぽいけどよく分からない。そんな時にはてんかんの既往歴、家族歴、反復性の症状か確認、発作後の昏迷、眼球偏位や自動症で鑑別つくかも。
オマケ程度に考えていいやつ? 
そもそも
けいれん=Convulsion(不随意な筋萎縮)、Seizure(大脳の異常な電気的活動)
だから上の2つはどちらもけいれんと言えるのかもしれない。


②でけいれんではなさそう
→失神っぽいなら失神の鑑別を開始。
③失神なら普通意識は数分以内に回復しているので問診可能。
割合:10%心原性、5%脳血管性、10%起立性低血圧、7%薬剤性、20%神経調節性、他?
・まず心原性:
・心原生っぽくない:心疾患既往なし→95%は別の疾患。
・心原性っぽい。高齢者は危険・注意。労作時失神、臥位失神、ミオクローヌス様痙攣。
その他:胸痛・呼吸困難→ACS, 大動脈解離(血圧左右差)、肺塞栓(低酸素)
オマケ:体位変換時→心房粘液腫→エコー確認。収縮期雑音→大動脈弁狭窄症
頸静脈拡張:右心不全、心タンポ、肺塞栓
心電図:虚血と不整脈に注意。
☆具体的に見方:V1の所見:右脚ブロック(特に2束ブロック)右脚がおそーくなるから、QRS波の陰性波のS波がだらっと広くマイナスしてる。V1でrsR(右→左(右)→右)だらっと長くR波がある中で間に左方向のs波がちょっと出るやつ。ウサギの耳
※左脚ブロック:V1の所見)QRS波が幅広に。V1のS波が幅広くなる。 
ブルガダ:V1-3のcoved型or saddle back型のST上昇。
QT延長:Torsades de Pointesの多型型心室頻拍ヤバい。

・脳血管性:基本的に頭部CTの優先度は低い。失神前後の頭痛はくも膜下出血を示唆する所見なので、疑ったら頭部CT撮影してもいいかも。
※他の脳血管性失神は病歴から拾い上げるのが良いか。失神の契機、誘発因子。
若年者の過換気(吹奏楽など)で誘発→もやもや病→MRA、MRI、血管造影→緊急性低い。
若年女性で倦怠感、微熱→高安動脈炎→上肢血圧左右差、血管雑音、造影CTなど
上肢を曲げたり、頸部を曲げたりした時→鎖骨下動脈盗血症候群
妊娠後期の仰臥位→下大静脈圧迫症候群
※大動脈解離(無痛性)→なんとなくシック…、なんとなくおかしい…→血圧左右差確認

・起立性低血圧:起立した時の失神だけど、はっきりしないことも多い。
☆簡易チルト試験(臥位から立位にして1,2,5分後に収縮期血圧20mmHg低下、PR30増加)
※輸液してると症状がマスクされる可能性があることは覚えとく。
原因:循環血液量減少、自律神経障害、薬剤性
特に循環血液量減少の中には致死的なのが隠れているので要注意。要採血
問診事項:吐血・下血→消化管出血、外傷歴・抗凝固薬→血胸、B・C型慢性肝炎→肝細胞癌、高齢者の腰腹痛→大動脈瘤切迫破裂、若年女性の下腹部痛→子宮外妊娠破裂、卵巣出血
・簡易チルト試験で血圧低下しても脈拍増加してなければ自律神経障害による失神。
→神経原性:パーキンソン、レビー、脊髄障害、糖尿病、アミロイドーシスなど基本その場での精査・治療は難しそう。→専門医コンサルトが無難?

・薬剤性:徐脈にするもの、QT延長<Ia抗不整脈薬、一部抗菌薬>、QRS開大<三環系抗うつ薬他色々>

・神経調節性:最多20%予後良好。何段階か必要→起立後5分以上経過してから失神。
血管迷走神経性失神(VVS):立位or座位の同一姿勢を維持している時に発生しやすい。
状況から明らかな場合以外はだいたい除外診断でやる。
前駆症状の確認も:頭重感、複視、嘔気、嘔吐、腹痛、眼前暗黒感など

状況失神:咳嗽、排尿、排便、嚥下時の失神。トイレで失神したからといってこの診断に飛びつくのはちょい危険。状況失神かもと思いながら、他のやつの除外することも大事。
頸動脈洞性失神:ひげ剃り、ネクタイ締めた時。動脈硬化からの頸動脈過敏だったり。


神経調節性失神→(脳)で交感神経の緊張が低下し、末梢血管の拡張が起こる。迷走神経の亢進が起こり心拍数が低下する→脳血圧低下と心拍数低下ダブルで血流↓→失神
意識障害が遷延している時はてんかんや他の疾患(意識障害の原因疾患など)が鑑別にあがってくる。

オマケ:高齢者。食後2時間→食後低血圧になることがある。(低血糖ではない)

判断の順番
・症状から失神か痙攣かの判断
・心電図と問診から心原性かの判断
・失神の契機などから血管原性の判断
・薬歴から薬剤性の判断
・失神時の状況や前駆症状から神経調節性の判断
・原因不明なら後日精査

イメ-ジとしては、脳に近い方から(頻度)
TIA(なさげ)<<脳血管原性<心原性(薬剤性含む)<神経調節性