肝・腎機能障害:検査値を正確に。

肝機能検査
①肝障害:AST(GOT)、ALT(GPT)、LDH
②肝予備能:合成能→PT, Alb,ChE, コレステロール。解毒・排泄→ICG試験、アンモニア
③慢性の炎症:γグロブリン、ZTT、TTT
④胆道系:ALP, LAP, γGTP, ビリルビン

酵素
AST:short半減期短い、sakeアルコール性で高値。
ALT:long半減期長い、liver肝により特異的
LDH:どこにでもある酵素。AST,ALTの解釈の補助。LDH単独高値(LDH/AST>30)は悪性腫瘍や溶血、筋疾患を疑う。
場合によっては分析も
1.2→AMI,溶血性貧血,悪性貧血,腎梗塞
2,3→白血病悪性リンパ腫、筋ジス、肺梗塞
5→急性肝炎、肝硬変、肝癌など

肝予備能
PT:重要。半減期短い第Ⅶ因子と関連して、現在の肝機能を反映。AlbやChoEよりも優先して作られているので、これが40%以下だと超危険。50%も要注意。
Alb:半減期長い(21日)のでゆっくり
ChE:高値→肥満で脂肪肝、DM、甲状腺↑、ネフローゼS、 参考程度に
   低値→低栄養、急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変、chol作動性クリーゼ、有機リン中毒
Chol:高値→肥満、甲状腺↓、ネフローゼS。低値→肝硬変、低栄養、甲状腺
おまけ:Chol高値、高CPK、軽度AST,ALT上昇、大球性貧血→甲状腺機能低下疑う。

胆道系:胆汁うっ滞でも肝障害でも上がる。
ALP:色々上がる。骨代謝、胆道、肝障害も。分析も有用
1,2:胆道、3:骨代謝、4:妊娠後期の胎盤、悪性腫瘍、5:脂肪、肝硬変、慢性腎不全、6:潰瘍性大腸炎
γ-GTP:肝胆道系で上がる。骨はなし。ALPだけ上がったらALPと合わせて判断する。他よりも鋭敏にアルコール性肝障害を反映する。他に薬剤性やNASHも。
γ-GTPとALPは一緒にとるとよさげ。

ZTTとTTT→血清アルブミンの減少とγ-グロブリンの増加を反映、肝の線維化
ZTT:高値で慢性肝炎、自己免疫性肝炎、肝硬変、肝細胞がん、慢性炎症など
TTT:高値でA型肝炎、慢性活動性肝炎、肝硬変、脂肪肝など
脂肪肝の分類:診断は肝生検
脂肪肝→アルコール性脂肪肝と非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)
NAFLD→非アルコール性脂肪肝(NAFL進行しない)、非アルコール性脂肪肝炎(NASH進行性で肝硬変や肝細胞癌の発生墓地になりうる。)

検査値からの推測
肝疾患:「感染・炎症」、「占拠性・浸潤性」、「物質の沈着」、「うっ血・虚血」

AST<ALT:肝により特異的なALTが上昇→肝

AST>ALT:肝か他(溶血、筋、胆道疾患)、他の検査値を参考に
+LDH、K、間Bil上昇→溶血性疾患→網赤血球増加、ハプトグロビン低値
+CK上昇→筋疾患(骨格筋も心筋も)甲状腺↓からのミオパチーもある。

ASTの目安→正常:30。肝硬変:60。慢性肝炎:90。アルコール性肝炎:300。急性肝炎:900。薬剤性・虚血性肝炎:3000
どれも上下50%程度の幅あるので参考程度に。覚える必要なし。イメージ。
超高値の薬剤性肝炎→アセトアミノフェンなど、虚血性肝炎→ショック肝を考える。

胆道系疾患(ALP, γGTP, 直Bil)
AST,ALTよりも優位に上昇していた場合に胆道系を疑う。

☆ウイルス性肝炎の検査の順番
①HBs抗原、HBc抗体、HBs抗体:スクリーニング
②HBs抗原⊕→HBe抗原・抗体とHBV-DNA量測定→核酸アナログ
③HBs抗原⊖→HBs・c抗体確認⊕、HBV-DNA量→検出→核酸アナログ
HBV-DNA検出されなかったらモニタリング。抗体陰性なら置いとく。
まずHBs抗原、HBc抗体、HBs抗体とって次にHBV-DNA量と他ちょこっと調べる。

緊急対応
肝炎;安静、絶食、輸液、原因薬剤中止とか
肝性脳症:上記+モニラック・シロップ(ラクツロース20ml1日3回)を経口かNGチューブ
+アルギメート200mlかアミノレバン500ml点滴。どっちも同じアルギニン
特発性細菌性腹膜炎SBP:ロセフィン2g

 


腎機能:急性腎障害AKIを考える。対応も
①腎機能低下
②緊急透析の適応確認(高K血症、代アシ、尿毒症、肺水腫)
③体液量評価、NSAIDsなど腎毒性っぽい薬の中止、腎後性腎不全の除外(腹部エコー)
④尿検査で尿中Na、Cr。血中Na,Crも調べてFENaなどより腎前性か腎性か調べる。
⑤FENa<1%で腎前性→脱水→容量負荷(外液)→血清Creで治療判定
⑥改善してたら原疾患の治療。改善していなかったら腎エコーで水腎症確認
※FENa>1%で腎性腎障害なら検査色々。

①48時間以内にCre0.3以上か基準値の1.5倍に上昇。6時間以上尿量<0.5ml/kg/hが持続。
③体液量:循環血漿量の減少→起立性低血圧、頸静脈の虚脱。心不全なら浮腫でも有効循環血漿量が低下している。ただの低血圧も。他に薬剤性に糸球体血流量が低下もある。IVC径を確認するのが一番手っ取り早いかも。IVC径が呼吸性で半分以下になる。
脱水:バイタル、意識、口腔粘膜、眼窩陥没、眼球乾燥、ツルゴール低下、BUN/Cr>20
・薬剤:NSAIDs, ACE-I, ARB, 抗癌剤、抗菌薬
・腹部エコーで腫大した膀胱や水腎症の有無、腎のサイズ確認。
④FENa=尿Na/血Na÷尿Cr/血Crx100。尿中Na<20mEq/Lが腎前性も感度90%,特異度82%でよさげ。計算してる暇がないなら、尿中Naに注目すれば良さそう?
※利尿剤使用中はFENaも尿中Naも当てにならないので注意。その時はFEure。BUN

・腎性腎障害
部位:腎血管障害(数%)→糸球体障害(数%)→尿細管障害(85%)→間質性障害(10%)
・尿細管障害。圧倒的に多い
→急性尿細管壊死→循環不全か薬剤性(アミノグリコシド、アムホテリシンB)、他にミオグロビン(横紋筋融解)、ヘモグロビン(溶血性貧血)、尿酸、ベンジョ蛋白、高Ca血症など
治療は血管内容量を保つ(輸液)、MAP平均(ここ大事)血圧を70mmHg以上に保つ。薬剤調整、透析考慮。
※尿細管の機能が不十分なため、大量の希釈尿→脱水→腎前性腎不全をきたすことがある

・間質性腎障害:症状軽微。簡単に見落としてしまう。
85%が薬剤性。抗菌薬、抗てんかん薬、オメプラ、アロプリ、H2-blocker
10%が感染。ヘルペス系のウイルス感染。細菌、真菌など
他が膠原病(SLE,血管炎、サルコイドーシス、特にシェーグレン症候群は1型遠位尿細管型アシドーシス)、悪性リンパ腫
尿検査では無菌性膿尿、白血球円柱、好酸球尿など参考にできる。
治療は原因薬剤の中止とステロイドだけど、この辺は専門コンサルしてからか。適応は慎重に。だけど、診断から7日以内には開始したい。不可逆な腎機能障害をきたしやすいため
適応:生検で診断を確定している。薬剤中止後も1週以内に改善しない。腎機能悪化しているけど腎生検できない。

・腎血管障害:血管炎や微小血栓障害、他に腎硬化症や強皮症、コレステロール血栓症
コレステロール塞栓症:確実・簡単な検査はない。状況から判断。
動脈硬化に血管造影や抗凝固療法施行→血管内プラーク破綻→飛んで詰まって→3-8週後に週単位で進行する腎障害・皮膚病変(網状皮斑や潰瘍、壊死など)・好酸球増多
運動後急性腎不全→横紋筋融解とは別モノ。ミオグロビン尿出ない。
高強度の運動→何かの物質が出る→腎動脈攣縮→腎障害。
症状は運動後数時間して腰背部痛や嘔吐。低尿酸血症が特徴的

糸球体性
特に急速進行性糸球体腎不全は重要→肉眼的血尿、蛋白尿、貧血、腎不全
他にANCA関連疑って、ANCAや抗GBm抗体、補体も確認する。

腎後性腎不全:腹部エコーで尿閉確認
尿閉:末梢神経障害による神経陰性膀胱と前立腺肥大による下部尿路閉塞が2大原因。
他には抗コリン薬も